研究課題/領域番号 |
16K17107
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
佐藤 英司 福島大学, 経済経営学類, 准教授 (90707233)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 上水道事業 / 下水道事業 |
研究実績の概要 |
本研究は,上下水道の国内料金格差に対する事業効率化の効果に関する定量的分析を行うものである.特に,事業効率化の具体的な施策として (1) 水利権制度改革と (2) 上下水道事業の広域化に注目し,上下水道事業広域化推進と平行して水利権制度を改革することによって,上下水道料金低下ならびに国内料金格差が縮小することを実証的に明らかにすることを目指している.平成28年度は,(i) 上下水道事業者および地域特性データの収集・整理,(ii) 上下水道事業広域化地域の調査,(iii) いままでの研究の発展の3点を行なった.第一に,上下水道事業者および地域特性データを一つのデータセットとして構築した.日本の上下水道事業者データは主に『地方公営企業年鑑』から得た.『地方公営企業年鑑』には各上下水道事業者の施設・業務概況に関するデータや損益計算書,貸借対照表が収録されている.また地域特性データは『統計でみる市町村』および市町村統計から得た.第二に,上水道事業を広域化している八戸圏域水道企業団を調査した.国会図書館で資料収集を行なった上で,八戸圏域水道企業団にインタビュー調査をした.これによって,事業広域化に関する実務的な問題や関連する諸制度の背景的知識を得た.第三に,下水道事業の事業統合に関する実証分析を行なった.Satoh (2012) において下水道事業において市町村統合に伴う費用削減の計測を行ったものの費用関数の説明変数が不十分であった.先行研究をもとに説明変数を再考し,改めて分析を行なった.現在,その分析結果を学術論文として取りまとめている最中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施計画では,平成28年度に(i) 上下水道事業者および地域特性データの収集・整理,(ii) 上下水道事業広域化地域の調査,(iii) いままでの研究の発展の3点を行うこととしている.(i) 上下水道事業者および地域特性データの収集・整理はおおむね順調に進展できた.しかしながら,(ii) 上下水道事業広域化地域の調査についてインタビュー対象事業者が八戸圏域水道企業団のみとなってしまった.さらに,いままでの研究の発展として下水道事業の事業統合に関する実証分析を行なったものの推定結果が予想と不整合な部分があり分析結果を固めるのに時間がかかってしまった.したがって,現在までの進捗状況はやや遅れていると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度も当初の研究計画の通り行うこととする.平成29年度は (1) 平成28年度まで行なってきた研究のさらなる発展,(2) 構築したデータセットを用いた実証分析の開始,(3) 水利権取引市場の調査の3点を行う.第一に,昨年度まで行なってきた研究のさらなる発展として下水道事業の事業統合に関する実証分析の結果を学術論文としてとりまとめ英文校閲を経て英文査読誌へ投稿する.これは平成28年度に遅れている部分を確実な成果とすることになる.第二に,構築したデータセットを用いて水利権制度の問題点を明らかにする実証分析を試みる.体的にはデータ包絡分析を用いて効率性の指標を計測し,計測された効率性指標を被説明変数としてブートストラップ法で推定する.第三に,水利権取引市場の調査として現存する文献,可能であればインタビューを実施したい.以上のように,当初の研究計画にそって研究を推進することとする.
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