本研究は,上下水道の国内料金格差に対する事業効率化の効果に関する定量的分析を行うものである.特に,事業効率化の具体的な施策として (1) 水利権制度改革と (2) 上下水道事業の広域化に注目し,上下水道事業広域化推進と並行して水利権制度を改革することによって,上下水道料金低下ならびに国内料金格差が縮小することを実証的に明らかにすることを目指している. 平成30年度は,平成29年度に英文査読誌へ投稿した結果を受けて,研究を進化・発展させた.その結果,学術論文1本が英文査読誌に採用が決定した.採用が決定した論文は,水利権が再配分されない制度上では水道需要変化への対応が柔軟的になされないという仮説を検証し,水利権が再配分されない制度によって水道事業者がどの程度効率性を損ねているのかを定量的に測定したものである.2008年から2014年までのデータを用いて分析した結果,水利権が再配分されない制度によって水道事業者は効率性を損ねており,過剰な水利権を効率性向上可能な事業者へ仮想的に委譲した場合,7.19%効率性が向上することがわかった.この研究結果を英文査読誌Water Economics and Policyへ投稿し,改訂を経て平成31年12月に採用が決定した.現在,出版待ちである. さらに,平成28年度・平成29年度に引き続き平成29年度は『地方公営企業年鑑』や『水道統計』から各上下水道事業の施設・業務概況に関するデータを,『統計でみる市町村』および市町村統計から地域特性データをそれぞれ追加収集・整理を行い,より長期にわたるデータセットの構築を行った.また,文献やインターネットを介して,水道事業広域化地域および水利権取引市場の現状と課題について調査を行った.
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