研究課題/領域番号 |
16K17109
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
鈴木 慶春 千葉大学, 法政経学部, 講師 (30748520)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 競争促進政策 / 知的財産権政策 / イノベーション / 経済成長 |
研究実績の概要 |
平成28年度は市場競争の内生的変化を取り入れたモデルを構築し、競争促進政策と知的財産権保護政策が一国の経済成長に与える影響を解析的分析により明らかにすることが目的であった。実際には、平成28年度はこの目的を達成しただけでなく、当初の想定以上に研究が進行した。以下では平成28年度中に得られた研究成果について具体的に記述する。 本研究では市場競争を促進する政策が必ずしも経済成長を促進しないことを、標準的な理論を拡張した比較的シンプルなモデルで解析的に示した。モデルでは、市場の先導者がその優越的地位を利用して新規参入を制限するという、独占禁止法で制限されている「私的独占」が起きている市場を想定した。私的独占を制限する度合いのパラメーターの変化は、市場におけるイノベーション率に対して逆V字の影響を与えることが明らかになった。つまり、市場の先導者に対して過剰な独占力や過少な独占力を付与する政策は経済成長の観点から望ましくなく、中程度の独占力を与えることが経済成長率を最大にすることが示された。 また本研究では、先導者が有する特許の保護を強化するいわゆるプロパテント政策もまた必ずしも経済成長を促進しないことを示した。具体的には、私的独占が厳しく規制されており市場が競争的である環境においてのみプロパテント政策が必ず市場のイノベーションを促進することが明らかになった。これは政府による市場の競争促進政策とプロパテント政策が補完的な関係にあることを示唆する。この結果は、市場のイノベーションを促進するためには競争政策・特許政策のどちらかを実施するよりも、双方を合わせて行なうことが効果的であるという政策的インプリケーションを持つものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は理論モデルの構築を行い結果を得るまでが当初の研究計画であったが、それを比較的早い段階で達成することができた。また、この研究は平成28年度中にディスカッション・ペーパーの形で公開するだけでなく、研究セミナーにて報告を行なうまでに至った。論文の形にまとめたり、研究報告を行なうのは平成29年度中にする予定であったため、当初の研究計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は既に4件のセミナー・学会報告を行なうことが決まっており、様々な研究者からコメントを受けることにより、研究のブラッシュアップを図っていくことが当面の目標となる。 また国際的な学術雑誌に投稿し、審査員から有益なコメントを得て改訂することを通じて将来的に掲載されることを長期目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画段階では平成28年度中の研究報告で海外に渡航する必要があるかどうか未確定であったが、実際には海外での報告を行わなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は既に海外での学会報告が内定しているため、この旅費として充当する計画である。
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