平成30年度は、平成29年度の研究を応用する形で、市場競争の内生的変化を取り入れたモデルのもとで、知的財産権政策が一国の経済成長に与える影響を分析した。以下では平成30年度中に得られた研究成果について具体的に記述する。 特許を取得した企業はその技術の利用だけでなく他社への特許ライセンスからも収益を得ることが可能であるが、先進企業が高過ぎるライセンス料を取る、あるいは後続企業への特許ライセンス自体を拒絶することは競争法によって制限されている。 そこで本研究は、企業が自由にライセンス料を設定できる余地を残しながらも、そのライセンス料には上限があることを新たな制約として課した。 その結果、政府はライセンス料の上限を設定することで、条件付きではあるものの、社会厚生を改善しうることが分かった。具体的には、ライセンス料の上限を設けることで特許取得企業が十分に利益を得ることが困難となってしまうが、その代わりに多くの他企業がその技術にアクセスできるようになるため、次のイノベーションが促進される効果も同時に存在するからである。 本研究の論文はレフェリーによる指摘を受け、改善を行い、海外査読付き雑誌Macroeconomic Dynamicsに掲載が決定された。
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