研究実績の概要 |
2019年度は特許保護の強さがイノベーションに与える影響について研究した論文"Patent Protection, Optimal Licensing, and Innovation with Endogenous Entry"が海外査読付き学術雑誌であるMacroeconomic Dynamicsに掲載された。この研究では特許保護の強化が特許ライセンス料の高騰を招くこと、またそれにより参入企業が減り後続の研究開発活動が阻害されることを明らかにした。この結果は特許保護の強化が必ずしもイノベーションを促進しないという実証研究と整合的であり、そのメカニズムを紐解く一端となるものである。 また2019年度はそれと並行して競争政策がイノベーションに与える影響について研究した論文"Competition, Patent Protection, and Innovation with Heterogeneous Firms in an Endogenous Market Structure"が海外査読付き学術雑誌であるJournal of Public Economic Theoryに掲載された。この研究の理論モデルでは、参入企業を増やすことによる市場競争の促進が非効率企業の研究開発からの撤退を促す選別効果を持つ一方で、激しい競争により研究開発からの利益が小さくなってしまう効果を持つ。その結果、市場競争の度合いと平均的なイノベーションの間に逆U字型の非単調的関係が生じることを明らかにした。
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