研究課題/領域番号 |
16K17112
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
北野 泰樹 青山学院大学, 国際マネジメント研究科, 准教授 (70553444)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自動車市場 / 次世代自動車 / 離散選択モデル / 構造推定 / 政策評価 |
研究実績の概要 |
本研究では,2010年度以降に導入された自動車市場における次世代自動車(クリーンディーゼル,電気自動車)を含む環境優良車に対する減税,補助金措置が次世代自動車の普及に与えた影響および,自家用自動車市場における代表的な環境指標の一つである平均燃費の改善に与えた影響について評価する.分析では,減税,補助金措置の影響が自動車のモデル内のグレードレベルで異なること考慮に入れた実証モデルを構築し,モデル内のパラメタを推定する方法を提示,応用する.さらに,推定結果を用いてこれら政策の影響を定量的に評価するとともに,補助金制約や税収の制約といった政府の収支に係る制約を考慮した費用効果分析を実施する.費用効果分析の結果から,燃費改善と次世代自動車の効率的な普及を実現するような政策設計を提示する. 本年度は,2016年度までに実施した推定の改善が研究の中心となった.詳細は以下の通りである.2016年度までに,基本的な推定モデルおよび推定結果は得ていたが,ディーラーのサイトに掲載されるグレード情報を用いる場合,グレードの性能の違いがモデルによっては大きく異なり,推定結果を得ることが困難なケースに直面した.特に,小さな違いで50以上のグレードが提供されるモデルもある一方,一つのグレードしか存在しないモデルも存在するため,ディーラーのサイトのグレード情報をそのままデータとして利用することは難しいという結論に至った.これに対処するため,2017年度は,型式を一つのグレードととらえ,データベースを再構築した.これにより,モデルごとに極端にグレードの数が異なる問題は解消された. 本年度は,新たなデータベースを用いた研究成果の報告はできていないが,これまでに実施した関連研究については国際学会を含む各種研究会で報告を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果は以下の通りである. (1)グレードレベルの分析を進めるため,データベースの作成を進めた.ウェブサイトから収集したデータについてはウェブスクレイピングを実施する業者へ依頼した.また,日本のみならず,海外の市場の動向の把握,分析のため,中国自動車市場のデータを中国人RAを雇用し,収集した. (2)グレードレベルの分析ではないものの,本研究と関わりの深い2009年度のスクラップインセンティブ付の補助金政策の評価である"Environmental Policy as Implicit Industrial Policy: Case of the Japanese Car Market"をUniversity of Auckland Business Schoolで開催されたAsia Pacific Industrial Organization Conference(APIOC)にて報告を実施した.また,関連する研究として,異時点間の代替に注目した補助金政策の効果の測定を2009年の補助金政策の制度上の特徴を利用した研究を進め,まだ論文の作成にはいたっていないが,"Short and Medium Run Effects of Replacement Subsidy: Case of the Japanese Car Market"と題し,Pan Pacific Research in Economic Researchにて研究報告を実施した. (3)関連し,本研究を含む政策評価に応用するための実証分析手法を,イノベーションの定量評価という観点から「イノベーションの測定」と題し,本の1章として発表した. 以上より,課題は残されているものの,研究期間内には期待される成果を残せる見込みであるため,おおむね順調といえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は以下の通りである. (1)おおむね修正版のデータベースは完成したので,推定を進める.推定結果が得られたのちに,2016年度にまとめた"Measures to Promote Green Cars: Evaluation at the Car Variant Level"の改定を進める.その他,スクラップインセンティブ付の2009-10年の補助金政策の評価に関連する論文の執筆,改訂を進める. (2)執筆した論文は国際学会を含む学会発表,各大学で開催される研究会で報告を実施する.予定する国際学会は,4月にインディアナポリスで開催されるInternational Industrial Organization Conference(IIOC),12月にメルボルン大学で開催されるAPIOCである.(IIOCは本報告書を執筆時点で報告済みである)さらに,早稲田大学や東京大学の研究会での報告も予定している. (3)執筆した論文は英文校正の後,査読付きの学術誌に投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度はデータベースの作成に時間を割いたため,論文執筆に遅れがあった.そのため,特に英文校正に使用予定であった予算が残ってしまった.2018年度中に,論文が完成する予定なので,昨年度の残額を英文校正に使用する予定である.
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