研究課題/領域番号 |
16K17114
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
青木 周平 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (00584070)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 所得格差 / 科学・技術・イノベーション政策 |
研究実績の概要 |
(1) Aoki and Nirei (2015)モデルを用いた所得税仮説の検証および政策分析 2017年7月に、American Economic Journal: Macroeconomics誌にて、共著論文 Aoki and Nirei "Zipf's Law, Pareto's Law, and the Evolution of Top Incomes in the U.S."を発表した。本論文は、1970年代以降のアメリカの所得格差の拡大の多くが、所得税等の変化 (主に所得税の減税) によって説明できることをマクロ経済学の手法を用いて分析した論文である。また、先進諸国の所得・資産格差の推移を分析するため、資産相続のモデル化の方法や、経済全体のショックが存在する場合の分析方法等について、理論的検討を行った。
(2)科学・技術の影響を考慮した動学的一般均衡モデルの構築および政策分析 2017年11月に、Public Policy Review誌にて、共著論文 Aoki and Kimura "Allocation of Research Resources and Publication Productivity in Japan: A Growth Accounting Approach"を発表した。本論文は、日本の国立大学の論文数の変化要因に関して、経済学の成長会計の手法を用いて分析し、大学教員の研究時間の減少が2000年代の日本の国立大学の論文生産に顕著な負の効果を与えている等の結果を導いた。また、理論モデル構築のため、19世紀~20世紀のイギリスや日本の技術史を文献調査し、経済成長の前提条件に関わる主要なファクトを整理した。また、日本の歴史的データの収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書の「研究計画・方法」にて、研究期間中に公刊を目指すと記載した4本の論文のうち3本は、現時点で公刊済みである (ただし、3本のうち1本は研究期間前に採択済み)。一方、残り1本の論文に関しては、論文で提示した理論仮説の検証を行う必要がある。そのためには、データセットの作成とその分析が必要である。これらの作業に時間がかかることから、残り1本の論文に関しては、研究期間中には公刊が間に合わないこと等が予想される。
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今後の研究の推進方策 |
「Aoki and Nirei (2015)モデルを用いた所得税仮説の検証および政策分析」に関しては、長期の所得・資産格差の推移を分析できる理論モデルを構築することを優先して行いたい。その上で、当モデルが格差の推移を説明しうるか分析する。 「科学・技術の影響を考慮した動学的一般均衡モデルの構築および政策分析」に関しては、未公刊の論文の理論仮説の検証のために必要なデータの作成と、科学・技術の影響を考慮した動学的一般均衡モデルの構築の2つを進めたい。 ただし、時間的な制約上、上記の方策の全てを最終年度中に実現することは難しいことが予想されるため、達成が容易なものから研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では、未公刊論文の海外の学会での発表等を見込んでいたが、その前に論文の採択が決まった。そのため、その分の支出が行われなかった。そのため、最終年度終了後、平成29年度の「次年度使用額」と同額程度が未使用で返還されることが予想される。
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