1970年代以降、先進諸国で、経済格差が拡大していることに関し、所得格差指標である上位1%シェアが上昇している事実などが報告されるようになり、その原因を解明することが課題となっている。本研究では、政策の変化が格差の拡大に与えた影響に焦点をあてマクロ経済学的に分析を行った。主となる研究では、所得税などの税制の変化が人々の間の所得格差に影響を与える効果を分析するため、マクロ経済理論の構築と分析を行った。具体的には、研究期間中には、理論モデルの中で所得税の変化により所得格差などが少しずつ変化する様子(移行動学)を数値計算する方法の開発を行った。また、開発した理論の現実妥当性を、「理論が正しいとしたら、~の現象が起きているはずである」という理論予測を立て、それを現実と比較する形で検証した。本研究では、1970年代以降のアメリカの上位1%シェアの上昇を、所得税などの税率の変化により説明できることを理論的に示した。この成果は、研究期間中に学術誌に採択され公刊された。従となる研究では、日本の国立大学間での競争的研究資金の割合の増加による、大学間での研究資金の格差拡大が、国立大学の研究成果にどのような影響を与えるかをマクロ経済学の手法を使い分析し、その成果を研究期間中に公刊した。これらの研究成果は、現実の経済格差に対しあるべき政策を議論していく上で、役立つものと考えられる。今後の研究の展開として、本研究で開発した理論モデルを、現実の様々な現象を分析するために利用していくことを考えている。1970年代以降、経済格差の拡大に付随して、米国などで、金融部門が大きく成長するようになっている事実などが報告されるようになっている。現在、こうした現象を本研究の理論モデルで説明可能かどうかの分析を行っている。
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