研究実績の概要 |
2017年度の研究では,前年度の研究を継続しながらも,研究途中で得られた重要な結果を研究成果としてまとめた。 まず,本研究の中心的課題の1つである投入物を選択した場合のモデルについて部分的な研究成果が得られた。これは,Mizuno and Takauchi (forthcoming) としてAsia-Pacific Journal of Accounting and Economicsから出版されることとなった。この研究では,企業が投入物の種類を選択することにより,自身の生産技術が変化するだけでなく,財を販売する場合に適応される税制が変わることに注目している。この研究の特徴としては,選択可能な技術には不確実性を伴うものと,それを伴わないものとが含まれていることである。分析の結果,平均的には非効率であり,また,不確実性を伴う技術が選択される可能性を明らかにしている。 別の研究成果として,直接販売を伴う市場における企業間の競争に関する論文を2本執筆した。これは,本研究課題の主要な応用部分に位置付けられている。まず,Matsushima and Mizuno (2018) では,製造業者が小売業者を通じた間接販路に加えて,それを通じない直接販路を設置できるモデルを分析した。この研究の特徴は,小売業者が自身の努力によって,間接販路の効率性を高める可能性を考慮したことである。分析の結果,小売業者の努力によって直接販路の設置が抑止されるが,この努力が十分であるため,直接販路の設置による脅しには望ましい性質を有することが分かった。 さらに,直接販売を伴う別の研究成果として,Matsushima, Mizuno, and Pan (2018) がある。先行研究では,小売市場の逆需要関数として明示的な関数形を与えていたが,この研究では関数形を定めない一般形として分析している。分析の結果,直接販路の効率性が十分に高い場合,直接販売は社会的に望ましくないことが示された。
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