研究課題/領域番号 |
16K17118
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研究機関 | 亜細亜大学 |
研究代表者 |
猪原 龍介 亜細亜大学, 経済学部, 准教授 (20404808)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 地域間で差別化された労働者 / 異質性の持続可能性 / 異質性への寛容度 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、都市集積における労働者の多様性の役割を明らかにすることにある。そこでの注目点は、地域間で差別化された労働者、異質性の持続可能性、および異質性への寛容度の3点である。そこで本年度はまず、予備的研究として「寛容性の選択モデルが示す異文化間教育の意義-経済学的アプローチ-」を多文化関係学会年次大会において報告した。本研究では、コミュニケーションにおける寛容性の役割をモデル化したIhara & Yamamoto (2016)の「寛容性の選択モデル」を拡張し、個人間で寛容性の上限が異なる場合において、互いにコミュニケーションをとりあう均衡が消失する場合があることを示した。また、上記議論を異文化コミュニケーションの文脈に当てはめることで、寛容性の上限を引き延ばすための異文化間能力開発の必要性を指摘した。 次に、労働者の異質性と都市集積の関連を分析するために、2地域世代重複モデルを構築した。ここでの注目点は、労働者の多様性の持続可能性である。労働者の異質性は、生まれ育った地理的・文化的な影響によるところが大きい。よって、都市に集まった労働者が世代交代し、その子孫が都市に固着化すると、労働者間で価値観の共有が進み、労働者の多様性が失われる。つまり、都市がその活力を維持するためには労働者の地域循環が必要とされると考えられる。分析の結果、定常状態では集積の経済が存在する場合において、労働者が一方の地域に集中する均衡が存在することが示された。一方で、経済に存在する主体の効用の総和を最大化する政府の行動を考えた場合には、労働者は地域間に一定程度分散することが望ましいことが示された。これは、労働者の地域間循環の必要性を指摘するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に従い、出生地により差別化された労働者が存在する集積モデルを提示し、労働者の異質性の持続可能性を分析した。本研究は、まだ学会報告を含めて公表には至っていないが、世代重複の要素をモデルに導入することは平成29年度以降の計画だったので、その点で研究は順調に進んでいる。一方、異質性への寛容度の選択モデルを拡張することで、異質性が生産活動において効果を発揮するための要件について考察している。本研究は多文化関係学会2016年度年次大会において「寛容性の選択モデルが示す異文化間教育の意義-経済学的アプローチ-」として報告している。
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今後の研究の推進方策 |
基本的なモデル構築と予備的分析は進んでいるが、労働者の地域間の調整コスト(狭義には地域間の移動費用)が都市集積に与える影響については十分に分析がされていない。よって、今後はまず異質な労働者間の調整コストをモデルに組み入れた分析を行う。その上で、異質性に対する調整コストが労働者の寛容性に依存して決まるものとして、寛容性の選択モデルの要素を導入することで、調整コストの選択行動と都市集積の関係を分析したいと考えている。
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