研究課題/領域番号 |
16K17123
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
Vu TuanKhai 法政大学, 経済学部, 准教授 (80552603)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | intermediate goods trade / exchange rate regime / East Asia economies / NOEM |
研究実績の概要 |
近年東アジアにおいて興味深い生産・貿易構造が形成されており、とりわけその中で域内の中間財貿易が重要な存在となっている。本研究の目的は、このような生産・貿易構造を捉えることができる開放マクロ経済モデルを構築し、それを用いて東アジアにおける為替制度選択問題を考察することである。また、理論モデルによって示唆される東アジア域内各国間における貿易のリンケージやマクロ経済の連動性について、データを用いる検証も行う。 平成28年度には、上述の東アジアの生産・貿易構造を考慮に入れ、域内貿易を取り入れた3か国の新しい開放マクロ経済モデルを構築した。モデルにおける3か国とは、日本ともう一つの東アジアの国、及び米国に代表される外部の世界である。構築したモデルを用いてシミュレーションを行い、幾つかの興味深い結果が得られた。例えば、日本で金融緩和が行われると、価格硬直性の下で総需要効果(貨幣供給による総需要増大)と(名目と実質)為替レートの変化による支出転換効果(expenditure switching effect)によって東アジアの国の貿易収支への影響が決定されるが、域内貿易が存在する下では日本での金融緩和による日本の最終財輸出の増加が東アジアの国の中間財の需要を増大させることとなり、これが東アジアの国の貿易収支に影響を及ぼす、従来のモデルには存在しない新しい経路である、ということが分かった。 本研究の結果を"Intra-regional trade in intermediate goods and the choice of exchange rate regime in East Asia"と題した論文にまとめ、the 15th International Convention of the East Asian Economic Association (2016年11月)という国際学会で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は筆者が法政大学に転職して1年目であり、法政大学の仕事環境に慣れるのに時間が必要であり、なおかつ前任校での授業担当もあったため、本研究に割く時間が制限されたからである。
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今後の研究の推進方策 |
これまで構築した理論モデルを次の方向に拡張する。すなわち、(i)ロテンベルグ型価格調整費用関数を導入し、(ii)東アジア諸国のマクロ経済データや産業別の生産・貿易データを用いてモデルをカリブレートし、パラメータを設定し、さらにモデルをベイズ手法で推定することを検討し、(iii)「東アジア」に中国を追加し4か国に拡張する。その際に得られる新しい結果を論文に反映させ、国際学会で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に旅費と物品費が当初の計画よりも支出が少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、前年度から繰り越しされた479,662円をコンピュータや計算ソフトウェア(MatlabとEviews)及び書籍の購入費用などにに充てる予定である。
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