平成30年度には、これまで行った理論研究と実証研究をさらに発展させた。理論研究においては、東アジア諸国のマクロ経済や産業レベルの生産・貿易データを収集・整理したうえでそれを用いて、前年度まで構築した、東アジアの貿易構造を取り入れた新しい開放マクロ経済学(NOEM)モデルのカリブレーションを行った。さらに、経済厚生の観点から東アジアにおける為替制度選択問題を分析した。得られた新しい結果を論文に取り入れ、新しいバージョンの専門ジャーナルへの投稿に向けて理論の論文を改訂した。 実証研究においては、前年度のサンプルに香港を新たに追加し、分析対象の東アジアの国の数を9に拡大した。そして、増加したサンプルの下で、各国の情報を活用し、東アジアの域内中間財貿易が域内各国間のマクロ経済相互依存とどのような関係をもつかについてクロスセクションの分析を行った。得られた新しい結果を実証の論文に反映させ、国際学会で発表した。現在は論文の改定を行っており、近日専門ジャーナル投稿する予定である。 平成30年度に行った研究から得られた新しい結果は、理論と実証の両方において前年度までの結果と概ね整合的である。しかし、これらの新しい結果は新しいデータや分析方法によるものであるので、これによってこれまでの研究結果の説得力が強化され、研究の質が一段と向上するといえる。
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