研究実績の概要 |
本年度は、森林火災のローカルな影響を把握するため、インドネシア・中央カリマンタン州において、フィールド調査を実施した。調査では、火入れの時期や被害経験などに関する情報を約600家計から収集した。中央カリマンタン州では、2016年より農家の火入れに関する監視が強化されたため、当該年度中に火入れを実施した農家は全く観察されなかった(例年は4割ほどの農家が火入れをおこなっていた。)。また、火災の被害に関しても2016年はほとんど報告されなかった。 そこで、分析の対象地域を拡げるため、United States Agency for International Development (USAID)によって実施されている、Demographic and Health Surveys (DHS)などの大規模家計調査を用いて、煤煙による健康被害などに焦点をあてて分析をおこうこととした。今年度は関連文献の調査とデータ整理をおこなった。文献調査の結果、インドネシアの森林火災の煤煙による大気汚染と、乳幼児死亡率との関連性が指摘されていることが明らかになった(Jayachandran, 2009)。DHSのデータについては、申請が受理され、取得することができた。DHSには、世帯員の健康状態や妊娠出産の履歴情報などが詳細に含まれているおり、森林火災によって、これらの健康状態がどれほどの影響を受けているのかについての検証をおこなう予定である、 また、森林火災の位置情報について、National Aeronautics and Space Administration/Moderate Resolution Imaging Spectrometer(NASA/MODIS)が提供している火災発生位置の衛星データを用いて、住居位置と火災発生ポイントとをリンクさせた。これにより、火災が家計にどのような影響を与えているのかの検証を今後おこなう予定である。
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