研究課題/領域番号 |
16K17127
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山本 裕基 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 助教 (00757974)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インドネシア / 森林 / 農業生産性 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に実施したフィールド調査によって得られたデータ等を用いて、森林と農家の関係についての定量的評価を実施した。また、Rand corporationが実施している、Indonesian Family Life Survey(IFLS)をや衛星観察による森林被覆率の情報を組み合わせて、分析をおこなった。主な成果として、The Effects of Forest Change on Agricultural Productivity: Evidence from Indonesia, SSRN Research paper seriesとして報告した。本研究では、森林生態系が失われることによる農業生産性への影響について、人工衛星によって観察された森林被覆率データと農家の家計調査データとを組み合わせて分析をおこなった。近年、インドネシアの農村地域においては、森林のパーム油農園への変換によって、急速に森林生態系サービスが失われており、農業生産への影響が懸念されている。結果として、地域の森林被覆率が1%減少するごとに、農業生産性が約3.6%減少することがわかった。これは、2001年から2014年までのインドネシアにおける農業生産の損失に計上すると、約20.63億ドルとなる。我々は、森林生態系サービスが農業生産性に与える影響のメカニズムとして、森林生態系サービスが持つトリなどの害虫コントロールが考えられることを明らかにした。また、森林生態系サービスの撹乱によって、農家の非食糧品への支出が減少していることもわかった。従って、農園開発などによって経済的恩恵を受けられなかった住民にとって、貧困リスクが高まっている可能性が懸念される。 最終年度には、これらの効果のメカニズムについて、現地調査を実施してあきらかにする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大規模家計調査データを用いた分析が完了し、論文を投稿したことから順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、本年度におこなった研究成果を踏まえたうえで、メカニズムの解明を目標にして、現地フィールド調査を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は当初予定していたフィールド調査の実施を見送り、調査準備をおこなった。したがって、旅費・謝金等の支出が予定より少なく、持ち越すこととなった。理由の通り、今後はフィールド調査を実施する予定である。
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