本年度は、フィールド調査によって得られたデータを用いて、森林と農家の関係についての定量的評価を実施した。また、Rand corporationが実施している、Indonesian Family Life Survey(IFLS)と衛星観察による森林被覆率の情報を組み合わせて、森林生態系が農業生産に与える影響について、定量的に分析をおこなった。成果として、Forest change and agricultural productivity: Evidence from Indonesiaとして、World Development誌に公刊した。近年、インドネシアの農村地域においては、森林のパーム油農園への変換によって、急速に森林生態系サービスが失われており、農業生産への影響が懸念されている。推定結果として、地域の森林被覆率が1%減少するごとに、農業生産性が約3.6%減少することがわかった。これは、2001年から2014年までのインドネシアにおける農業生産の損失に計上すると、約20.63億ドルとなる。我々は、森林生態系サービスが農業生産性に与える影響のメカニズムとして、森林生態系サービスが持つトリなどの害虫コントロールが考えられることを明らかにした。また、森林生態系サービスの撹乱によって、農家の非食糧品への支出が減少していることもわかった。従って、農園開発などによって経済的恩恵を受けられなかった住民にとって、貧困リスクが高まっている可能性が懸念される。また、インドネシアのパーム油農園の拡大が先進国の消費に関してどのように促進されているのかについて、日常生活とパーム油の見えない繋がり『月刊アグリバイオ9月号』において公刊を行った。
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