本研究の目的は、企業ダイナミクスに係わるテーマの一つとして、企業の技術変化を促すものは何であるのかを定量的に明らかにすることである。本研究では、特許データベースを活用することで企業の技術構成の変化を客観的に評価し、その上で変化を促す活動として共同研究の役割に注目する。各特許出願について、共同研究はどのようなタイミングで出現するのかを検証することで、共同研究と技術構成の変化の関係を実証的に示す。 本年度は、昨年度の分析を発展させ、当該特許と企業の特許ポートフォリオの技術距離を計測し、当該特許の技術距離と共同研究である確率がどのような関係にあるのかを示した。すなわち、探索(技術距離が遠い)と活用(技術距離が近い)のどのようなバランスで共同研究が発生しやすいのかを検証した。技術距離を測ることで、探索と活用を離散的ではなく、連続した指標でとらえることができる。分析結果について、技術距離と共同研究の確率はU字の関係が見られ、探索的な技術(技術距離が遠い)で共同研究は発生しやすいことがわかった。さらに、企業規模を考慮した分析では、企業規模によって技術距離と共同研究の確率の関係は異なることを示した。 企業ダイナミクスにおいて、企業は技術構成を変化させ、自社の事業を展開していくが、探索的な技術に進む際、他者との共同研究が行われやすい。本研究では、個別特許技術レベルで実証分析を行い、これを支持する結果を得た。これらの成果について、研究セミナーで報告し、論文にまとめて公表を行った。
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