本研究では,世代間資産移転(贈与・遺産)の動機の解明に取り組んだ。遺産分割の結果から被相続人(親)の遺産動機を推測したところ,跡取りに多く遺す「家」制度の影響や老後の面倒を看てくれた子に多く遺す交換動機と整合的な分割になっていた。また,この傾向は子供だけでの分割となる二次相続よりも生存配偶者が遺産分割に関与できる一次相続の分割により強く反映されていた。一方,贈与は,結婚や住宅取得などの大きな支出を伴うライフイベントの際や,非正規雇用者などの雇用の安定性が低い子や所得・資産が少ない子に対して多く行われる傾向が見られた。したがって,遺産と異なり,贈与は利他的動機に基づいて行われることが示唆される。
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