本研究は、世界中で成長著しいオンライン労働市場において、どのようなインタラクションを通じて受発注が成立するのかを分析するものである。直接顔を合わせることなく相手と取引するオンライン労働市場では、オンラインショッピング等のその他ネットエコノミーと同様に、これまでの仕事実績や第三者からの評価が極めて重要になると考えられる。従来の労働市場とは異なる競争メカニズムが働いているオンライン労働市場の特性を理解することで、既存市場の問題点や課題を解決するような新たな求職チャネルとなり得る可能性のある同市場を分析することは、政策面からも意義のある研究課題となる。 こうした背景のもと、これまでの2年間で、ウェブスクレイピング技術を用いたデータ収集を行い、分析用のデータセットを構築した他、(1)発注者の視点からみて、どのような受注者を選ぶのか、(2)受注者の視点からみて、どのような発注者の仕事に応募するのか、の2つの観点から研究を進めてきた。これらの分析により現時点で明らかとなったのは、(1)発注者の視点からは、受注者を選ぶ際に、これまでの仕事実績から得られた第三者評価を極めて重視しているだけでなく、どの国の労働者なのかも考慮しているということであり、また(2)発注者の視点からは、受注者がどの国の人かは考慮していない一方で、英語を母国語としているかどうかを重視しているということである。本年度は、こうしたこれまでの一連の取り組みを引き継ぎ、分析モデルの精緻化および結果の頑健性の確認等を進めたことに加え、国内外の学会や研究セミナーで積極的に論文報告をし、受けたコメント等のフィードバックをもとに、さらなる研究の改善と論文の改訂につなげた。
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