研究実績の概要 |
経済学研究で労働の流動性(labor mobility)の主な決定要因として、仕事満足度(job satisfaction)が注目されてきた(Freeman 1978, Clark et al. 1998, Levy-Garbous et al.2007)。そのため、高度人材外国人の還流型移民を研究する際に、仕事満足度の分析が重要だと考える。職務満足度については国内外で移民労働者に焦点を当てる経済学研究は少なく、特に出身国の関連賃金(relative wage)が外国人労働者の職務満足度に与える影響は未だに明らかになっていない。そこで、本研究は日本のデータを用いて学術的な貢献を目指した。まず、賃金が高い労働者、残業の頻度が低い労働者、外国人の上司がいる労働者、ワーク・ライフ・バランスを重視した企業や長期雇用を中心とした企業で働く労働者は、仕事満足度が高いことを示した。それから、出身国での関連賃金が仕事満足度に与える影響については、3つの方法を用いて、頑健性のある結果を示した。まず、関連する労働者グループの平均賃金を関連賃金として利用する方法では、出身国の平均所得が高い外国人労働者ほど、日本における仕事満足度が低いことが示された。それから、賃金関数から推定した個人レベルの期待賃金を関連賃金として利用する方法では、出身国での関連賃金が高い労働者ほど、日本での仕事の満足度が低いことが統計的に有意に示された。最後に、サンプル・セレクション・モデルの方法も用いて、サンプル・バイアスを考慮しても、同じような結果が得られた。なお、同調査データを用いた賃金の決定の分析では、有意な結果が得られなかったが、労働の流動性については、仕事満足度は賃金と同じような重要な役割を果たすため、本研究で仕事満足度の分析を通じて、高度人材外国人の還流型移民に対する理解を深めた。
|