研究課題/領域番号 |
16K17147
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
稲垣 一之 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (70508233)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 経常収支の反転 / 高齢化 / 平均寿命ギャップ |
研究実績の概要 |
2016年度には、1本の論文を作成して、学会・研究会での報告を7回行った。当初の予定通りに、経常収支と人口構造の関係性を理論と実証の双方から検証することが出来た。作成した論文は現在まとめている最中であり、今年度の早い段階で学術雑誌へ投稿する予定である。研究の具体的な内容は、以下の通りである。 本研究の実証分析と理論分析から分かったことは、各国の高齢化の差は経常収支に影響を与えるということである。高齢化のギャップが小さい場合、他の条件を一定とすれば、外国の高齢化は自国の経常収支赤字を拡大させる。したがって、この段階では経常収支不均衡の拡大が観察されると考えられる。実証分析の結果は、1990年代前半から2000年代前半のアメリカが該当することを示唆する。しかしながら、より重要であることは、高齢化のギャップが更に広がると、自国の経常収支赤字が縮小に転じるということである。つまり、高齢化によって発生した経常収支不均衡は、高齢化のギャップが広がるにつれて解消される。この結果は、高齢化が経常収支の反転に影響することを示しており、外国の高齢化が自国の経常収支に与える影響を3つの要因に分解することで理論的に説明することが可能である。本研究の実証分析の結果は、2000年代半ば以降のアメリカが該当することを示唆する。 人口動態が長期的な国際資本移動のパターンに影響するとすれば、アメリカとその他の先進国における平均寿命の差が近年のトレンドを維持する限り、アメリカにおける経常収支赤字の問題は、部分的に解消されるかもしれない。また、高齢化に伴い各国の退職年齢が延長されれば、この傾向が更に強まる可能性もある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目に論文の土台を作り、2年目に積極的に報告をする予定であったが、1年目で論文をほぼ完成させて、それに並行して7回の報告を達成することが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは今年度の早い段階で昨年度の論文を完成させて、学術雑誌へ投稿する。 加えて、現在進めている研究論文の作成を通じて、平均寿命といった人口構造の変化だけではなく、それに伴う高齢労働者の比率の変化も経常収支に影響を与える可能性があることが分かってきた。経常収支と高齢者の労働供給の関係性は、既に理論的に整理することが出来ている。データも既に入手済みであり、あとは理論との整合性を検証するのみである。この試みは、経常収支の決定要因に関する文献では初めてのものであり、今年度中の完成を目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
極めて少額であったため、次年度の雑費として使用することを計画した。
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次年度使用額の使用計画 |
雑費として使用予定。
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