研究課題/領域番号 |
16K17149
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
英 邦広 関西大学, 商学部, 准教授 (40547949)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 金融政策 / 時系列分析 / 所得不平等 |
研究実績の概要 |
令和元年度は研究を開始してから4年目であり研究最終年度でもある。当該年度では、非伝統的金融政策下で大量の流動性が市場に供給されたことで、まず金融資産の価格が変化し、その後、家計の収入や購買意欲に影響を与え、最終的に日本における不平等が拡大したか、否かの検証を行うことに着目をして研究を進めた。また、研究最終年度でもあるため、3年目までに得られた分析結果やその分析結果の解釈の見直しも併せて行った。主な研究成果としては次の3つが得られた。1つ目に、日本銀行が金融緩和として政策金利の引き下げを実行したことが、所得不平等を高めたことである。その効果に関しては、ショックから10年間継続していたことが確認された。2つ目に、日本銀行が金融緩和として非伝統的金融緩和政策を実行したことによって所得不平等の高まりが起きたか、否かに関しては、起きたことを支持する結果は確認されなかった。3つ目に、大学への進学率が高まったことによって所得不平等の高まりが起きたか、否かに関しては、起きたことを支持する結果が確認された。その効果はショックから4年後から6年後までの2年間継続していたことが分かった。上記の研究成果は、「金融政策と格差問題に関する一考察」というタイトルで論文にまとめ、現在、公刊されている。 上記の研究成果には、金融政策と資産の関係を不平等の視点から検証する上で十分にできていない点もある。これは、令和元年度の1月下旬から3月末までに参加予定であった学会・研究会・セミナーが新型コロナウイルスによる影響で急遽中止になったことで、他の研究者からの意見等を聞く機会が失われたり、資料収集や調査による作業を一時的に中断・延期する必要が出てきたりしたことが影響している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和元年度は研究を開始してから4年目であり研究最終年度でもあるため、当該年度で研究が終了する予定であった。しかし、令和元年度の1月下旬から3月末までに参加予定であった学会・研究会・セミナーが新型コロナウイルスによる影響で急遽中止になったことで、他の研究者からの意見等を聞く機会が失われたり、資料収集や調査による作業を一時的に中断・延期する必要が出てきたりしたことで、非伝統的金融政策下での金融政策と資産の関係に関して十分に検証できていない点が出てきてしまった。そこで、研究期間を1年間延長し、不平等の視点から十分に検証できていない金融政策と資産の関係に今後、重点を置いた研究期間とすることにした。こうしたことから、現在までの進捗状況に関して、「遅れている」と判断することとした。
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今後の研究の推進方策 |
令和二年度では、不平等の視点から十分に検証できていない金融政策と資産の関係に重点を置いた研究期間とし、国内外にある関連研究のサーベイ、資産に関するデータの確保・処理を引き続き行い、非伝統的金融政策の実施による所得、資産、消費に対する影響を調査していく。 なお、令和二年度においても、ある段階で研究内容をまとめ、国内外の学会やセミナーで報告することで他の研究者や実務家の人達からの助言を得ることや金融政策や金融 市場に関連する有益なデータに関する情報を得ることができるように努め、効率的に研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、1月下旬から3月末までの間で学会・研究会・セミナー等に参加し、他の研究者から意見を聞いたり、資料収集や調査に行ったりして経費を使用する予定であった。しかし、新型コロナウイルスによる影響で1月下旬から3月末までに参加予定であった学会・研究会・セミナーが急遽中止になったり、資料収集や調査するための関係機関等への出張が困難になったりしたことから経費を使用することが困難になったため、次年度使用額が生じることとなった。 令和二年度の研究計画としては、不平等の視点から十分に検証できていない金融政策と資産の関係に重点を置くことにし、そのために必要な旅費、物品費に充てることにする。なお、現状では出張に行くことも困難であるため、物品費の比重が高くなることも予想される。
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