日本の死亡率は1920年頃から減少に転じ、戦後に至るまで継続的な低下を記録した。とりわけ消化器系疾患による死亡者の割合は、近代水道の導入が進んだ1920年代以降に大きく低下したことが知られている。しかし、近代水道の普及と人口動態の関係については、これまで研究が進んでいなかった。本研究では、1920-1930年代における日本の都市部で導入された近代水道が、死亡率に与えた影響を定量的に分析した。都市別パネルデータを新たに構築し、史料に基づく計量経済モデルについて統計解析を行った結果、近代水道の普及は死亡リスクを減じるが、その処遇効果は一定ではなく異質性をもつことが明らかになった。
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