研究課題/領域番号 |
16K17155
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
平野 創 成城大学, 経済学部, 教授 (30508601)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経営史 / 産業史 / コンビナート / 重化学工業 / 産業政策 / 化学産業 / エネルギー産業 / 地域経済 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,日本におけるコンビナートの歴史的展開を明らかにすることである.日本のコンビナートは,エネルギー価格の高騰,重厚長大型から軽薄短小型への産業構造の転換など過去に大きな危機に直面したにもかかわらず,そうした危機への対応を重ねた結果,今なお出荷額および付加価値生産額において日本の製造業の中で大きな割合を占めている.また,三大都市圏以外の地方自治体にとって,コンビナートは雇用や税収その他の点で必要不可欠な存在となっている.こうしたコンビナートの歴史的展開を精査し,さらに国内拠点間,海外のコンビナートと比較研究を行うことにより,帰納法的に日本の製造業再生,地方活性化への道筋を発見していくことが可能であると考えている. これまでの進捗時状況は,おおむね順調に進行していると考えられる.本年度は研究成果が『コンビナートと地方創生』(共著)として刊行された.同書において,川崎,四日市,新居浜の各地域に関して,コンビナートの歴史とともにその地域において展開された地方自治体による産業政策の歴史を記述した.また,近年,コンビナートの競争力に変化(競争力の低下)が生じているのか否かを明らかにするため,2006年以降の時期を対象とし,すべてのコンビナート立地地域の出荷額・付加価値額等の動向を概観した.さらに経営史学会の全国大会において「パネルセッション 産業史研究における組織的なオーラルヒストリーの可能性:石油産業の事例を中心に;化学産業とオーラルヒストリー」と題してパネルセッション報告も行った.その他,コンビナートの主要構成業種の一つであるエネルギー産業に関連して,自動車技術会(JSAEオンラインフォーラム)において「エネルギー転換と需要家の機能」と題する研究報告を行った.また,本年度は化学産業のオーラルヒストリーを『成城大学 経済研究』にて公表するなどの研究実績もある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
すでに書籍,論文,学会報告などを通じて,複数の研究成果を公表するなど研究は順調に進展している.今年度はコンビナートの歴史に関する書籍も刊行に至った.また,本年は新たなヒアリングの実現などもあり,特に四日市コンビナートに関する調査研究が進展した.本年の当初目標は達成しており,本研究課題全体の所期の目的も達成されつつある.
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今後の研究の推進方策 |
現在までと同様に現地調査,史料収集,ヒアリングを進行させるとともに,研究成果を書籍,学会誌・学内誌等の学術雑誌に投稿することを予定している.特に各コンビナート地域の歴史と地方自治体における産業政策の歴史に関してさらに考察を進めたい.調査に関しては,コンビナート立地地域における現地調査及びヒアリング,現地の図書館等での史料収集を進めていきたいと考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナウィルス感染症の拡大によって,現地調査が困難であったため使用額に変更が生じた.次年度は感染状況も考慮しつつ,現地調査,史料収集,ヒアリングを積極的に進めたい.特にコンビナート立地地域における競争力強化の取組の歴史について明らかにしていきたい.さらに,研究成果を国内学会において報告することも計画している.研究費の使用用途としては,具体的には,国内での現地調査・史料収集・ヒアリングのための旅費,史資料の購入,業界誌の講読,ヒアリングのデータ化,化学関係の各種データ入力などを中心に考えている.
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