本研究の目的は,日本におけるコンビナートの歴史的展開を明らかにすることである.日本のコンビナートは,エネルギー価格の高騰,重厚長大型から軽薄短小型への産業構造の転換など過去に大きな危機に直面したにもかかわらず,そうした危機への対応を重ねた結果,今なお出荷額および付加価値生産額において日本の製造業の中で大きな割合を占めている.また,三大都市圏以外の地方自治体にとって,コンビナートは雇用や税収その他の点で必要不可欠な存在となっている.こうしたコンビナートの歴史的展開を精査し,さらに国内拠点間,海外のコンビナートと比較研究を行うことにより,帰納法的に日本の製造業再生,地方活性化への道筋を発見していくことが可能であると考えている. これまでの進捗状況は,おおむね順調に進行していると考えられる.本年度は最終年度であるため,これまでに行った研究成果の公表に集中した.研究成果としては,コンビナートを題材とした共著書を1冊出版するとともに,コンビナートの歴史に関連する2件の学会報告を行った.特に近年(2000年代以降)の政策的動向なども踏まえたコンビナートの競争力強化に向けた取り組みについて追加的な調査を実施し,これを学会において新たに公表した.また,四日市および大分コンビナートに関する追加のヒアリングも実施した.さらに,研究成果の一部を反映する形で「大分コンビナート企業協議会」や水島コンビナート活性化検討会の「水島コンビナートカーボンニュートラル研究会」など地方自治体が主催する会合においても講演するなど社会的発信にも努めた.
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