2018年度は次の点から研究を進めた。1つは、経営者ネットワークによる役員兼任行動に関する研究である。2016年度及び2017年度に収集した役員兼任状況と財務情報に関するデータベースを使って、兼任役員を多数登用する会社における収益状況を検討した。分析結果については、英文にて論文を執筆し、現在、英文査読付き雑誌において査読中となっている。 もう1つは、2017年度から引き続き、1920年~1937年に発行された日本の社債のデータベースの作成を行った。日本興業銀行の『社債一覧』を用いて、対象時期に発行された社債を ピックアップした研究である。社債発行企業における財務データを入手し、そのデータをデータベースに加えた。加えている内容は、利益情報、負債金額情報、総資産金額情報である。 最後に、1893年~1899年のいわゆる「旧商法施行時」における株式会社に対する規制についての論文の執筆を行った。東京都公文書館が所蔵する東京府文書を用いて、実際に農商務省や東京府が株式会社が設立される際に、どのような規制を行っていたのかを検討した。さらに、第1番目に記載した経営者ネットワークによる役員兼任行動との関係については、1893年~1899年の株式会社に対する規制が、役員兼任行動とどのような関連性を持つ可能性があるのかを考察した。その研究成果は、「1893年~1899年の株式会社規制」として、明治学院大学経済学会が発行している『経済研究』第157号(2019年1月)において発表している。
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