研究実績の概要 |
最終年度は、技術的なイノベーションとデザイン開発の相互作用について深耕をし、技術的なイノベーションの発生時にデザインがどのような影響を受けるかについて実証的な探求をした。成果の一つであるAkiike, Yoshioka-Kobayahsi, and Katsumata (2019)では本研究でその測定指標としての意義を確認した意匠登録件数のデータを用いて、インパクトのあるデザイン創出は技術的なイノベーションが一定の沈静化をしてからであることを確認した。この研究はこれまでの製品開発論研究に対して実証的な知見を提供するものである。 また、さらに国際会議発表であるYoshioka-Kobayashi, Kataoka, and Akiike (2019)では、意匠の引用データを用いて、情報機器の技術発展により、デザインが製品分野を超えて類似していく傾向があることを確認した。これは製品開発論のみならずデザイン学への示唆も与えるものであり、さらなる探求が可能である。 このように、前年までの研究ではデザイナーによる技術開発や製品のイノベーションへの影響を明らかにして来たが、最終年度のさらなる研究によって技術の発展にデザイン開発そのものが影響を受けることを確認できた。これらの知見は定性的には論じられてきたが、実証的な探求は乏しかったところ、本研究は意匠データの測定指標としての妥当性の検証を行ったうえで、特許・意匠という豊富な定量データを用いることで、客観的な形で検証を行うことができた。これらの知見は、産業界において製品開発を行う際に、技術開発とデザイン開発それぞれにどのように力点を置くべきかについて、示唆を与えるものである。
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