研究課題/領域番号 |
16K17163
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
坪山 雄樹 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (50508645)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 国鉄 / 再建計画 / 組織過程 |
研究実績の概要 |
今年度は、国鉄の内部資料の整理・分析とインタビュー調査を通じて1970年代前半の国鉄の2つの長期計画(国会で廃案になった計画も含める)における貨物の計画の策定プロセスを分析する予定であった。内部資料については、1970年代前半に作られた長期計画の策定過程の資料を多数得ることができ、どのようなバックデータに基づいてどの部門が立案していたのかが明らかになってきた。また、1970年代半ばに貨物部門が需要想定に関して拡大基調から現状維持で推移する内容へと方針転換していく過程についても内部資料に基づいて分析が進んだ。一方で長期計画内部資料の整理・分析は進んだものの、他方で夏から秋にかけての西日本の豪雨と北海道の地震により、予定していたインタビュー調査の多くをキャンセルせざるを得なくなった。それらのインタビュー調査は1970年代前半の2つの長期計画の策定プロセスに関するものであり、本研究にとって重要な調査であったため、研究の進捗に大きな影響が出た。調査が進まなかったことで、今年度に終える予定だった書籍原稿の執筆が終わらなくなった。代替的な方法の模索に時間をとられたこともあり、今年度は研究成果を出せずに終わることとなった。しかし、その過程で新たにインタビュー調査の了承が得られ、さらに新たな内部資料を入手することができたため、次年度の調査に期待を持てる準備を行なうことができた。こうした事情から、当初は本研究計画は2018年度で終了予定であったが、2019年度まで延長することにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では本年度は本研究の最終年度であり、本年度に行なわれる調査も含めてこれまでの調査・分析の結果をまとめていく予定であった。しかし、西日本の豪雨と北海道の地震により、研究計画の見直しをせざるを得ない状況となった。最終年度を2018年度から2019年度へと延長し、今年度キャンセルとなったインタビュー調査の一部を次年度に行なうことにした。また、残念ながら実行できなくなったインタビュー調査を代替するためのインタビュー対象候補者を探し、新たに4名の方からインタビュー調査の了承を得た。さらにその過程で1971年から1975年頃までの再建計画策定に関連する内部資料を得ることができた。以上のような代替措置の準備、その過程での資料の入手など、新たな調査の展開もあったものの、研究の進捗という点では遅れを見せることとなった。年度末の書籍原稿の脱稿を目指していたが、今年度実施予定だった調査のデータを必要とする部分があり、次年度に持ち越しとなった。また、昨年度に執筆したワーキングペーパーの改定を進め、論文として投稿をしたものの、まだ出版には至っていない。その他にこれまで行なってきたオーラルヒストリーを出版物にするための編集作業を本年度は行なっている。成果物は次年度に公開の予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度に実施できなかったインタビュー調査を、できる限り実施する。このインタビューは、1970年代前半の貨物部門における長期計画策定のプロセスを知る上で極めて重要な調査である。また、その代替として準備していたインタビュー調査もあわせて行なう。インタビュー対象者から得た資料や、これまでに得られた貨物局の内部資料とあわせることで、上記のプロセスに関しての重層的な理解が得られるものと期待している。また、次年度は新たに、計画策定にあわせて設置されていた各種審議会に専門委員として参加していた大学研究者(当時)にもインタビューを行なう予定である。これらの調査の成果を、次年度末に脱稿を予定している書籍に反映させていきたい。そのために学内外のセミナーを活用して分析結果の一部を報告し、分析に対するフィードバックを得たいと考えている。その他、これまで行なってきたオーラルヒストリーの成果を現在編集中であり、それらを次年度内に刊行する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度に行なわれる予定であったインタビュー調査が、西日本の豪雨と北海道の地震によってキャンセルとなり、調査・出張のために予定した金額を本年度中に消化することができなくなった。1970年代前半の国鉄貨物の再建計画の策定プロセスを理解する上では重要なインタビュイーに対する聞き取り調査であり、この予算を今年度中に別の目的に消化するのではなく、次年度に繰り越して調査に使用することにした。具体的には、インタビュー調査のための出張旅費、インタビューデータの書き起こしのための費用、資料整理のための人件費として利用する予定である。
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