2019年度は、国鉄の第2次再建計画における需要想定が第1次再建計画から変わっていった過程を調査した。機関決定の場である常務会に提出された資料に加えて、その前段階として貨物局内で検討用に作成された複数のシミュレーション資料などを入手し、フォーマルなレベルでの現状認識がどのように推移していったのかを把握した。そうしたフォーマルなレベルの現状認識が埋め込まれていたコンテクストを理解するために、政府関係機関の経済計画や審議会などの資料とのつきあわせを行ない、政府関係機関の文書間にどのようなネットワークが形成されていたのかを分析した。また、こうしたフォーマルなレベルの現状認識を当事者たちがどのように認識していたのか、当事者たちのどのようなやり取りを経て作成されていたのかを知るために、2019年度もインタビュー調査を継続した。下案を作成していた若手キャリア職員や実務担当のノンキャリア職員、それを取りまとめる課長や総括クラスの職員にインタビューを行なった。研究で得られた成果は、前年度に作成したワーキングペーパーを改訂して現在投稿中である。また、インタビューで得られた証言はこの時期の国鉄職員の技能形成や国鉄内の組織過程を知る上で有用な資料的価値を持つものであり、一部をオーラルヒストリーとして公刊するべく編集作業を行なった。このうち輸送と貨車運用の実務担当者のオーラルヒストリーについては編集作業を完了し、ワーキングペーパーとして登録をしている。最終的な成果として予定していた書籍については、計画の遅れもあり2019年度中の刊行には至らなかったが、以降刊行準備を継続している。
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