日本企業の海外事業投資に関して主として2つの方向から研究を行ってきた。第1は、スタートアップ企業への投資活動に着目して、日本企業のコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)活動についての研究である。CVCは、イノベーションの源泉として注目が集まっており、特に日本においてはVC投資に占めるCVCの割合が高く、その成果を検討することは学術的・実務的双方の観点から重要性が高いと考えられる。CVCは投資側の企業から見れば、スタートアップに事業活動を任せるという点で自律性が高く、他方でそれが知識移転を難しくさせるという点で、本研究の目的に合致した研究対象であると考えられる。より具体的に本研究では、アーカイバルデータに基づいてデータベースを作成し、国内・海外双方の観点から分析を行った。また、調査を進めていくために、アメリカカリフォルニア大学サンディエゴ校のUlrike Schaede教授と共同研究を行い、これまでに海外学会での発表、国内外のセミナーでの発表を行ってきた。これらの発表のフィードバックを活かして、今年度は学術論文の執筆の取り組んだ。 第2は、日本企業の直接的な海外事業活動として海外現地法人でのイノベーション活動の成果について研究を行った。特に、リバースイノベーションと呼ばれる新興国での研究開発活動が、本社にどのように還流されているのか、という点に注目した。日本企業を対象とした質問票調査を行い、今年度は3回の学会及びセミナーでの発表を行った。学術論文に関しては、これまでに2本の英語論文を執筆し、1本が今年度に海外ジャーナルに掲載された。もう1本は、今年度海外ジャーナルに投稿したが、不受理であったため別の投稿先を現在検討中となっている。
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