研究課題/領域番号 |
16K17166
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
遠藤 貴宏 神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (20649321)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 非市場戦略 / 実施 / 日本 / 出版 |
研究実績の概要 |
本課題は、出版業界の定価販売に関わる業界と政府の相互作用を事例研究の対象として、非市場戦略の「実施」について検討するものである。本研究は、規制の在り方に対して実際に企業が影響を与えようとするそのプロセス、すなわち「実施」の局面に注目した研究である。こうした「実施」に関するデータを取得するには、関係者とのかなり密接なやり取りを行い、信頼関係を築くことが重要である。そうした信頼関係を構築できるかどうかは、時間がかなりかかるものであるし、また、実際に時間をかけたからと言って、必ずしも信頼関係が構築できるわけでもない。そのため、重要な課題であるとは認識されつつも、それほど研究が蓄積されていない事項である。
出版業界に関する非市場戦略の実施を扱った事例研究は、出版物の定価販売に注目したものであった。この知見をまとめた論文(Legal structure, business organisations and lobbying: The Japanese publishing sector, 1990-2001)は、第一線の国際ジャーナルに受理・掲載することが想定よりも早くできた。そのため、新たな事例研究を行う上で、探索活動に使用することに注力した。特に、いわゆる「新興国」に日本企業が進出していく際の非市場戦略の在り方を探った。
具体的には、日本からベトナムに進出している企業と、現地ベトナム政府の非市場戦略の実施を見る上で、ベトナムに出張して、パイロット調査を実施した。さらに、アルゼンチンで開かれた国際学会にて研究発表をし、追加で執筆している研究論文のフィードバックを得るとともに、新興国を対象とした非市場戦略の実施に関する調査を行うための準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初に目論んでいた、出版業界を事例とした非市場戦略の「実施」に関する論文を第一線の国際誌に受理・掲載させるということを、達成したため。
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今後の研究の推進方策 |
パイロット調査に赴いたベトナム(ダナン)と、国際学会で訪問したアルゼンチン(ブエノスアイレス)ではそれぞれ、現地の政府関係者(ベトナム)および潜在的な共同研究者(アルゼンチン)であるキーパーソンとのコンタクトに成功し、現在でも追加の調査に向けてメールのやり取りを行っている。今後も定期的に連絡を取り、関係性を維持し、更なる調査ができる下地をさらに整えていく予定である。
またその一方で、「新興国」に関する既存研究の理解を深めることを計画している。「非市場戦略の実施」を「新興国」において分析する上では、これまでに申請者が注目してきた研究群のみでは不十分であることも明らかになった。申請者は、正当化(legitimation)に関する研究を主に参照してきたが、「新興国」に関する研究に対する文献・理論研究は手薄であった。
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次年度使用額が生じた理由 |
アルゼンチンへの旅費が当初よりも12,380円ほど節約できたために、次年度使用額が生じた。
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