研究実績の概要 |
本研究は、消費者が製品の使用過程で生み出す新たな機能の開発を価値創造過程ととらえ、分析対象としてきた。これまでの研究を通して、消費者側で生み出される新たな製品の使用方法や意味づけの変更(イノベーションの再発明(Rogers,2003))にはどのようなタイプのものが存在するのか、消費者による機能の創造はどのようなメカニズムを通して行われるのか、さらにはこうした消費者側で生み出された新たな機能や意味づけを再度、新製品の開発につなげるメーカーの製品開発活動の実態を調査してきた。 最終年度は主に、メーカー側が消費者の使用段階において生み出された新たな機能開発を自社の新製品開発活動に組み込む方法について調査を行ってきた。 調査・研究からは、消費者の価値創造を自社の製品開発に取り入れる際にキーとなるメーカー側のイノベーターの特徴や役割には共通点が存在することや、知の探索(exploration)と知の深化(exploitation)が高いレベルで達成されている組織(March,1991)ほど、消費者による価値創造を発見し活用する傾向が、特に消費財分野において強くみられることが浮かび上がってきた。 本研究は研究蓄積の少ない消費者側での新たな機能面での価値創造過程をイノベーションの視点から分析した点、また偶発的な消費者の価値創造の過程をメーカー側での新製品開発に組み入れる可能性を検討してきた点などに独自性と意義が存在する。 現段階ではいまだ仮説段階の発見事項が多く、また事例の積み重ねが不足しており最終年度中に形に出来なかった知見も数多く残されている。今後も引き続き当該課題についての調査研究を継続して行っていきたい。
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