研究課題/領域番号 |
16K17172
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
向井 悠一朗 高崎経済大学, 経済学部, 准教授 (40738514)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 製品アーキテクチャ / 製品開発 / 造船 / 設計 / 製品戦略 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、先行研究のレビューおよび造船会社の製品開発の事例研究を進めた。まず、先行研究のレビューに関しては、製品アーキテクチャ論の研究を中心に、昨年度の調査を補完した。昨年度は、製品や部品などのアーキテクチャが、それが使われる上位階層のシステムや補完財との関係性によってどのように影響するのかという点が議論の余地があることが確認された。本年度は、その点に着目してレビューを進め、当該製品システムとその周辺の補完財との相互依存関係については、過去に議論が既になされているものの、その中で重量や大きさといった物理的要因についての検討が少ないことが確認された。 事例研究に関しては、昨年度以前に行われた造船会社の製品開発の複数の事例研究を整理した。昨年度、製品全体レベルのアーキテクチャ選択が、製品のサイズの影響を受ける可能性が考えられた。その点について、各社の主力製品について、製品全体のアーキテクチャ選択を整理した。すると、主力製品のサイズが相対的に小さい場合(具体的には外航船の総トン数で約3万トン以下のハンディサイズの場合)、および相対的に大きい場合(総トン数で約7,8万トン以上の場合)、製品全体レベルのアーキテクチャ選択はカスタマイズ設計になる傾向が見られた。すなわち、その船が使用される環境における特定の補完財(港湾、水路など)に対する擦り合わせがなされる傾向があることが考えられた。一方、総トン数約3万トン~6,7万トン程度の、ハンディマックスからパナマックスと呼ばれるサイズを主力とする企業の製品全体のアーキテクチャ選択は、標準設計になる傾向が見られた。すなわち、製品使用環境における補完財に対して、汎用性が重視されていることが考えられた。 また、船舶の機関室設計の事例から、製品内部(下位レベル)のアーキテクチャ選択についても、各社の選択を整理している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、企業レベルの製品戦略と、個別製品の設計選択では、分析単位(フォーカルポイント)に乖離があることが課題として残されていた。本年度は、まず、企業全体としてのアーキテクチャ選択と、個別製品のアーキテクチャ選択を区別して考察した。そのうち、特に後者について、整理した。これにより、本研究の目的のひとつである、それぞれに異なる製品アーキテクチャ選択を行ってきた企業が、なぜ、そうした選択を行ってきたのかを検討することができた。 前者については、本研究のもう一つの目的である、先発国企業の優位性の考察に関連するものであり、次年度に検討すべき課題と考えられた。分析単位を峻別することにより。次年度に取り組むべき課題がより明確化したことから、おおむね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、各社の主力製品の個別製品レベルのアーキテクチャ選択について、整理した。これにより、本研究の目的のひとつである、それぞれに異なる製品アーキテクチャ選択を行ってきた企業が、なぜ、そうした選択を行ってきたのかを検討することができた。これについて、公表可能な代表的な事例について、論文化することを目指す。 第二に、先発国造船会社の優位性に関する、事業レベルの競争力分析を進める。これに関しては、国際経営論のレビューなどをより充実させる必要がある。 第三に、本研究課題の最終年度にあたり、本研究の持ちうる示唆の一般化可能性や限界についても検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、調査済の事例の整理・分析に注力したことと、本研究とも関連のある調査旅費を所属大学の個人研究費などで賄ったため、旅費が当初想定よりも少なくなった。次年度については、追加調査や成果発表等も想定される。このため、次年度の旅費が増加することが考えられる。また、先発国企業の優位性に関する検討は、今後重点的に着手する予定であり、その図書購入費や、公刊データの入手費用などが想定される。
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