2019年度は期間延長としての研究事業として、これまでの研究成果を踏まえたヒアリング調査として、新潟県燕三条や静岡県、長野県、東京都大田区中小・小規模企業を訪問調査を行った。その上で、2018年度までの研究成果を踏まえた上で、「中小・小規模企業の国際的アントレプレナーシップと地域公的機関活用モデル」に関する包括的な知見を得た。同時に、2019年度から開始した研究「中小企業の海外市場参入プロセスにおける従業員の企業家行動の促進・阻害要因と自律性」にリンクし、発展させる知見を得ることができた。また、これまでの国際的アントレプレナーシップに関する理論的枠組みに加えて、社会情緒的資産などファミリービジネスに関する先端的な諸理論やポートフォリオ・アントレプレナー、境界連結者における外部代表や情報処理、心理的オーナーシップといった既存の理論的要素から、調査事例を整理し、分析した。その結果、中小・小規模企業の国際的アントレプレナーシップと地域公的機関の活用の間には、ファミリービジネスの論理が介在していることを見出すことができた。また、その延長線上に、スピンオフ企業が誕生していることも見出すことができた。日本の中小企業の大半はファミリービジネスであること、日本の中小企業政策の対象はファミリービジネスが想定されていること、ファミリービジネスの国際化に関する研究はいまだに発展途上であることを考えると、当該知見は学術上、有用なものであると考えられる。なお、本研究に関して、2019年度は論文2本を発刊し、国内学会で4回、国際学会で1回の報告を行った。加えて、政府・自治体の委員としても、本研究成果を踏まえた知見を多く提示した。また、2020年度に複数の論文の公刊と学会報告がすでに決定している。
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