研究課題/領域番号 |
16K17178
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
糸久 正人 法政大学, 社会学部, 准教授 (60609949)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | コンセンサス標準 / 知識ベース企業理論 / イノベーション / オープン&クローズ戦略 / 自動運転 |
研究実績の概要 |
本年度の研究成果として、まずは、多様なプレーヤーがかかわるコンセンサス標準をめぐる企業行動を実証研究をベースに明らかにした。従来の研究では、コンセンサス標準に参加する各企業レベルに当てた分析視角を見つけにくかったが、本研究ではコンセンサス標準を「集合財」と捉えることで「知識ベース企業理論」と接合し、コンセンサス標準にかかわる企業の多様な行動を理解するフレームワークを導出した。具体的には、車載ソフトウェアの標準「AUTOSAR」の実証研究から、コンセンサス標準の形成に参与しかつ導入する「推進者」、参与しかつ導入しない「監視者」、参与せずかつ導入する「フリーライダー」、参与せずかつ導入しない「安住者」という4つのカテゴリーを特定し、そうした行動に影響を与える主たる要因として、各企業が有する知識量の多寡を特定した。 次に、IoT社会を意識した「つながる世界」への変革を念頭に、ビジネスエコシステムと標準の関係を理論面および実証面から明らかにした。モノとモノが企業の枠を超えてクラウド上でつながる世界では、各デバイス間のインターフェース標準がより一層重要となる。なぜなら、インターフェースが標準化されていなければ、多大な調整コストがかかってしまい、急速な変化についていくことは難しいからである。以上のことから、「標準はビジネスエコシステムを形成する土台」として位置づけることで、各企業の標準化への取組みと、そこから収益を獲得するための戦略について理論モデルを提示するとともに、自動運転などの最新事例を分析することで、政策及び企業戦略に対するインプリケーションを検討中である。 最後に、標準と中小企業の関係についても実証分析を行った。その結果、一部の中小企業は、標準をエコシステム形成のためのオープン戦略として活用することで、自社の特許等から収益を獲得していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題として、標準とビジネスエコシステムの関係性に関する概念の精緻化をベースに、1)標準を活用したビジネスモデル、2)中小企業における標準の活用事例、3)産業政策としての標準とイノベーションの関係という3つの領域を対象としたが、それらすべてに関して一定以上の研究成果を出すことができた。また本研究の成果は、学術誌での発表だけでなく、各種研究会、シンポジウム、企業研修等で広くアウトリーチ活動も実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策しては、「標準を中心としたエコシステム」の概念が、国家レベルの政策的にも、企業レベルの戦略的にも重要となる自動車産業におけるラディカルイノベーション「CASE: Connected, Autonomous, Share & Service, EV」を対象として実証分析を進めていく。最先端のケースに焦点を当てることで、標準に関する更なる理論的枠組みの拡張を試みる。 次に、今年度は最終年度でもあるために、各研究をまとめて統合的なアウトプットの作成を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費として想定したパソコン等の購入と、データ整理のための人件費の支出が遅れたため。次年度の早い時期に執行する予定である。
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