研究代表者の主たる関心は、創造性を中心とした組織のパフォーマンスを促すメカニズムを解明することにある。とりわけ本年度は、チームや組織のクリエイティビティ、生産性を左右しうる要因として、経験によって培われる認知、組織認知の表出形態としての自然言語に着目した。 主な成果は2つある。1つは、特定ドメインにおいて嚆矢かつ後世に強い影響を与えるイノベーターに関わる研究である。われわれはこのようなイノベーターのアイデアを「ルートコンセプト」と呼び、米国ラップ音楽を調査対象として、ルートコンセプトの経時的影響パターンを分析した。分析の結果、全く異なる2つの影響パターンをもたらすルートコンセプトの存在が浮き彫りとなった。一つは、規範が強く、ルートコンセプトと類似した作品を生み出し続けるパターンをもたらすルートコンセプトである。もう一つは、ルートコンセプトをベースにしつつも他の要素を加えていき、ドメインにバリエーションをもたらすパターンをもたらすルートコンセプトである。本成果は、International Conference on Computational Social Science(IC2S2)において査読付アブストラクトとして掲載予定である。 もう1つは、組織の認知に関わる研究である。有価証券報告書のテキストデータを用い、組織の外部環境に対する認識を測定し、企業パフォーマンスとの関係を分析した。他の組織と比較して認知が多様であることとパフォーマンスは逆U字の関係があることが示唆された。本成果はStrategic Management Societyのベストペーパー候補となるとともに、査読付プロシーディングスに掲載された。
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