研究課題/領域番号 |
16K17181
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
松野 奈都子 早稲田大学, 商学学術院総合研究所, その他(招聘研究員) (40732475)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | NPO / NPOと企業のパートナーシップ / 資源依存パースペクティヴ / センスメーキング / フレーミング |
研究実績の概要 |
2017年度は、当初の予定通り、1. 追加的な既存研究のレビューと2. 事例研究、3. 定性的な調査を実施した。 1. 追加的な既存研究のレビューについては、2016年度から継続しているセンスメーキング研究に加えて、フレーミングに関する既存研究をレビューした。定性的な調査の結果、フレームやフレーミングが調査対象のデータを分析するうえで有用であることがわかったため、今年度はフレーミングに関する既存研究のレビューを行い、事例研究に用いる概念枠組みを構築した。2. 事例研究については、1.で構築した概念枠組みを用いて2016年度に収集したデータを分析した。既存研究では、主観的なプロセスにはあまり注意が払われておらず、組織間の意味形成に関わる相互作用の過程は十分に検討されてこなかった。本研究の結果、参加組織の行動の変化を導くためには、シフティングとブレンディングの両方のフレーミングを組み合わせることが有効であり、実体験と自己意識的感情が組織化されたフレームに対する共鳴度を高めることを解明した。 3. 定性的な調査については、2016年度から引き続き、国際協力を行っている国内のNPOを研究対象としてインタビュー調査を行った。2017年度は、パートナーシップの展開段階についてのデータを収集することを目的として行った。本調査によって、パートナーシップによってNPO内で認識の変化がみられたことが確認され、その認識の変化がパートナーシップ以外のNPOの活動に影響を与えていたことが明らかになった。また、最初のパートナーシップに関わった参加組織の間で新たな商品の開発が始まっており、パートナーシップを通じた参加組織の認識や行動の変化が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた既存研究のレビューによる概念枠組みの構築と事例研究、継続的な調査は2017年度に実施できた。それゆえ、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。しかし、2017年度に予定していた複数事例の事例研究を行うことができなかったため、本研究課題の進捗状況はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度の研究計画は次の通りである。1. センスメーキング研究、パートナーシップ研究、フレーミングに関する研究の追加的なレビューを行い、事例の分析枠組みを精緻化する、2. 2017年度に収集したデータを用いた事例研究、3. 複数事例の定性的な調査を行う。 1. 2015年度以降の論文の知見を得るために、既存研究の追加的なレビューを予定している。これにより、2017年度に構築し、事例研究を通じて精緻化した概念枠組みをより精緻化することが可能になると考えている。 2. 2017年度には、パートナーシップの展開段階についてのデータを収集することができた。これまでのNPOと企業のパートナーシップに関する研究では、形成段階と実行段階が主に研究対象とされており、展開段階については十分に検討されていない。特に、日本ではパートナーシップを継続していくことは未だ困難な状況にあるといわれている。それゆえ、2017年度の調査で収集したデータは、パートナーシップがどのように継続されていくのかを明らかにするために有用であると考えられる。2018年度は、これらのデータを用いて事例研究を行う予定である。 3. 概念枠組みの精緻化のために、他事例の定性的な調査を行う予定である。2018年度は研究環境が変化するため、調査フィールドを新たに開拓し、定性的な調査を実施する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画していた、複数事例の事例研究を行うことができなかったため、次年度使用額が生じた。2018年度は、他の事例についても調査を計画しているため、その際の旅費や謝金、調査のコーディネート料として使用する予定である。
|