2019年度は、追加的な既存研究のレビューを行った。 前年度までの研究では、実体験と自己意識的情動の2つの要素を組み込んだフレーミングの概念枠組みを構築していた。しかしながら、そもそもNPOと企業のパートナーシップにおいて、なぜ自組織の資源の重要性を他組織に対して訴え、認識の変化を促す必要があるのかについて理論的な根拠が不十分であった。そこで本年度は、前年度までの研究で注目する必要があると考えた「resourcing」の文献と、resourcingの理論基盤の1つであるStrategy as Practiceの文献のレビューに取り組んだ。 resourcingの考え方に基づけば、資源の価値は固定的なものではなく、ダイナミックに変化するものであり、資源を使う主体が資源の価値を作り出すことができる。そして、資源の価値は、資源を認識する際に用いられる特定のフレームと結びつけられることによって生み出されるものである。それゆえ、資源の価値の生成プロセスを明らかにするためには、個人や組織の持つフレームに注目する必要があるのである。この視点に立てば、NPOは、これまで自組織の資源を評価していなかった企業に対してフレームの変化を促すことで、自組織の資源の価値を企業に認識させることが、パートナーシップを形成するうえで重要となる。実際に、バックグラウンドが異なるNPOと企業の場合には、お互いの持つ資源の価値を評価することが困難であるため、NPOあるいは企業が他組織に対して自組織の資源の価値を認識させることはパートナーシップの形成を促進するために実務的にも重要である。 これまでの申請者の調査においてもこの重要性は指摘されていたが、理論的な基盤が不十分であったため、今年度の研究によってパートナーシップ研究にresourcingの概念を組み込んだことは、学術的に意義がある。
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