研究課題/領域番号 |
16K17183
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
古川 千歳 愛知大学, 経営学部, 准教授 (40632857)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小規模企業 / 海外展開 / 信頼 / 学習 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
本研究の課題は、「小規模企業の海外展開における地域連携プロジェクトの実証研究」であった。その課題に対して、プロジェクトマネジメントと組織行動論の観点から地域連携プロジェクトの組織間関係構築プロセスの特徴と構成要件を具体的な調査により実証的に分析することを目的とした。 しかし、2020年からのコロナ禍により、国際展示会の開催が延期もしくは中止、そして小規模企業の海外交渉及び地域連携も中断する結果となり、そのために当初計画していた実証データが入手困難となり、検証に耐えうる調査が実行できない状況となった。 そこで、本研究の方法を以下のような理論的研究に変換し、研究テーマに沿った理論的基礎を構築することとした。まず、小規模企業の海外展開には、他企業・団体との信頼構築・ネットワークの形成が不可欠である。そこで、第一の課題として、組織間の信頼形成の要件の理論研究を行った。そして、組織間信頼には情報の獲得可能性が信頼形成の要件であることが示された。さらに、この信頼形成の発展段階では、各段階において信頼促進の要件が異なり、各段階で必要とされる情報の質も信頼促進の要件となることが示めされた。 第二の課題は、ネットワーク構築と信頼の関係である。小規模企業は他企業を結節点として様々なネットワークを拡大する必要がある。このプロセスは、チーム内・間の学習と類似している。本研究は、このチーム学習と信頼及びネットワークの関係を理論的に考察した。そして、チームの信頼とネットワーク構築は不可分の関係にあり、この相互依存関係が信頼形成プロセスに対応していることを明らにした。 以上のような理論研究から、小規模企業の活動を一般的な信頼問題とネットワーク形成の理論により特徴づけた。これらの知見は、2021年度において論文1編、学会報告3編としてその成果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、小規模企業の地域連携に関する情報を収集することが困難になった。また、当初予定していた研究方法を実証分析から理論的研究に転換したため、理論的先行研究の探索を再度行うことになった。その結果、研究の進捗状況はやや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題として以下のことを述べたい。今回の理論研究により多くの理論的知見が得られた。その特徴として、信頼形成の段階とネットワークの範囲が企業内・間の活動内容とその生産性を決定するというものである。 これら理論的示唆から、信頼とネットワークは、特に規模の小さい企業にとって、その企業行動と収益構造に対して大きく影響するはずである。したがって、この仮説は実証的に検証すべき課題であり、かつ小規模企業にとって必要とする成長要件となりうるかも検証すべきである。したがって、この理論的成果に基づく実証研究から、これまで示されなかった「小規模企業」の組織的行動様式を精緻に分析できると確信している。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、英語論文に対する校正費用が発生していないこと、また、新型コロナウィルス感染症の影響から国際学会へ参加する渡航費が発生していないことなどが挙げられる。今後の使用計画として、英語論文への校正費用や国際学会参加費用などを予定している。
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