研究課題/領域番号 |
16K17184
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
中本 龍市 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 講師 (80616136)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経営学 / 組織構造 / 分化と統合 / 制度論 / 国際経営 / 資源動員 / 組織間関係 / 正当性 |
研究実績の概要 |
平成28年度計画としては、主に日本国内の調査を行うことであった。本年度の最初の研究目的は、海外子会社側の組織構造と役割・機能、ならびに、本国本社側の海外子会社管理とグローバル化に対応した機構改革の実態についてパイロット調査として事例研究を行うことであり、すでに協力を得ている日本ファルマアライアンス協会(JPAA)を通じて、(1)内資系大手(武田、アステラス、エーザイなど)と(2)準大手(塩野義、大日本住友など)、(3)中堅(マルホ、科研、日本新薬など)ならびに(4)外資系大手(ファイザー、バイエルなど)、(5)その他の外資系(ギリアード、テバ、レオファーマなど)、をあわせて15社程度を調査対象とし事例-変数マトリックスを作成する。この過程では、調査分科会の協力も得ながら順次聞き取り調査を実施した。 なお、これと並行して二次情報の分析として、国際経営研究で定番として用いられてきた『海外進出企業総覧』から海外子会社のデータを収集してきた。ただし、これらの二次情報ではほとんどが、形式的な設立年、出資比率等であるため、組織の構造的側面に関する情報は皆無である。二次情報とパイロット調査で得られた一次情報をもとに各社、各国ごとの組織構造に関するデータベースの基礎を作った。これらについては、紀要論文に投稿するための草稿を仕上げている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
学部専任教員が定足数よりも大幅に下回っているため、学内行政の負担増などといった特殊要因があり、やや遅れている。後の年度でキャッチアップできるように修正する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に行った事例研究を元に、(1)外部環境(進出国の発展段階と制度的すきま、進出国が売上に占めるの程度、製品の多角化度合いなど)、(2)内部条件(部門間の分化のパターン、ラインとスタッフのパワーと関係、海外子会社側の公式権限やマネジャーの企業家活動といった行動様式、本国本社側の機構改革と意図など)、(3)組織フィールド内の正統性とファッション(組織フィールドでの参照対象、同業他社の進出形態など)、という組織構造の3要因の観点から影響する変数を分類し、特定する。平成29年度の目的は、それを元に、大規模なサーベイ調査を行うことである。この大規模サーベイの際に、産業間比較研究、国際比較研究を実施する。 すなわち、国際化で先行していた日本の自動車産業やエレクトロニクス産業、食品産業など、ならびにスタートップを対象とすること、加えて、外資系企業の本社、日本法人子会社を対象として組み込むことで、他産業での現地子会社の組織構造、国内で生まれる組織の場合の比較研究を行う。すでに研究協力を得ている外資系医薬品企業の日本法人を通じて海外本社法人の調査依頼を行う。これによって、産業特殊性で説明できる部分と共通性のある部分、国際化が本格化した産業ごとの世代効果を明らかにできる。単純なサーベイ調査のみでは、組織構造の時系列的変化を踏まえた動態的な分析は困難であるが、平成28年度に得た定性研究の結果と、発展段階が異なる産業間比較、国際比較によって動態的視点で分析する。平成29年度は、定性研究と定量研究を合わせて質の高い研究とした上で、日本的国際化の経営実践を世界的に発信するため、欧州経営学会(EGOS)、アジア経営学会(AAoM)などで発表する予定とする。同時に、前年度で取りまとめた定性的な事例研究については国内の学術雑誌(組織科学、日本経営学会誌等)に投稿することを目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
先述したように、学部専任教員が定足数を下回っているため学内行政負担が増加した。このため研究計画を一部遅らせることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
海外調査、また、郵送調査に適切に用いることで差額は当初通りの計画で使用できるものと考える。
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