研究課題/領域番号 |
16K17187
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
中岡 孝剛 近畿大学, 経営学部, 准教授 (50633822)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 先行研究の包括的なサーベイ / 現金保有動機の類型化 / 中小企業の現金保有行動 |
研究実績の概要 |
本研究は我が国企業における現金保有行動をそのダイナミズムの観点から明らかにすることを目的としている.本年度は研究計画に基づき,現金保有動機についての包括的なサーベイ調査を実施した.現金保有に関する先行研究は蓄積が進んでおり,十分な数の先行研究を調査することができた.調査の結果,現金保有の動機は大きく分けて,1)取引的動機,2)予備的動機,3)エージェンシー理論に基づく動機,そして4)節税動機の4つが指摘されていることがわかった.また,近年では,データ分析の対象を一つの国に限定せず,複数国の企業を対象にした研究も報告されており,投資家の保護度合いや文化などの相違が現金保有行動に影響していることが示されている.これらサーベイ調査の結果を整理し,ワーキングペーパーを発行した. 実証分析の準備として,会社四季報における研究開発費の予算に関する情報のデータ入力を実施した.また,借入データの整理やテールリスクを定量化するために必要な株価データの準備し,データ分析を進めている. このほか,中小企業の金融危機前後における現金保有行動についてデータ分析を進めている.前述の現金保有動機のうち,我が国中小企業においては,予備的動機が強く働いていることが明らかになっている.さらに,銀行との密接な取引関係が金融危機後の予備的動機に基づく保有を低減させることが明らかになっており,銀行の流動性供給者として役割が確認されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに,先行研究の包括的なサーベイ調査の実施し,ワーキングペーパーとしてまとめることができた.また,定量分析に必要なデータセットの準備も着実に進んでおり,一部定量分析を実施している段階である.したがって,概ね順調に研究計画を遂行できていると評価できる.しかし,手入力が必要なデータについては,リサーチ・アシスタントの不足により,目標のデータ分析期間に到達していない.新年度ではリサーチ・アシスタントを増員し,早い段階でデータ分析のステージに移行できるように注力したい.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画からやや遅延しているデータ入力作業を完了させ,データ分析のステージへの移行を図る.以降は当初の計画通りに,データ分析を繰り返し実施し,論文に執筆に注力し,セミナーや国際学会での発表を行うことで質の改善に努める.十分に質の改善が行えた段階で,雑誌への投稿を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していたデータ入力作業の完了がリサーチ・アシスタントの不足により遅延し,当該分析に必要なデータセット(予算:約300,000)の本年度中の購入を見送ったため生じている.また,引き続きデータ入力作業を行うリサーチ・アシスタントが必要なため,次年度の人件費として使用するにした.
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次年度使用額の使用計画 |
リサーチ・アシスタントによるデータ入力作業が完了した段階で,データ・セットの購入を行い,当該定量分析の実施を開始する.
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