研究課題/領域番号 |
16K17188
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
月岡 靖智 関西学院大学, 商学部, 助教 (50736709)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | コーポレートガバナンス / スチュワードシップ・コード / 議決権行使 / 株主総会 / 取締役の選任 / 所有構造 / 取締役の経歴 |
研究実績の概要 |
平成29年度は、平成28年度に整備した取締役データおよび議決権行使データを用いて以下の研究を行った。 【日本版スチュワードシップ・コードの導入が投資家の議決権行使行動に与える影響】 投資家の議決権行使行動がスチュワードシップ・コード前後で変化しかたどうか、変化したのであればどのように変化したかを検証した。具体的には、本研究はスチュワードシップ・コード導入前後で投資家別の持ち株比率と経営トップに対する議決行使結果の間の関係に変化があるかどうかを検証した。加えて、機関投資家の中でも信託銀行および保険会社についてはスチュワードシップ・コードの受け入れの有無および投資先企業との貸出関係の有無に基づいて分類し検証を行った。 検証の結果、以下のことを発見した。1) スチュワードシップ・コードを受け入れている信託銀行は、貸出関係がなくかつ業績が低い投資先企業の経営トップの選任議案に対してスチュワードシップ・コード導入後、反対票を入れるようになったこと。2) スチュワードシップ・コードを受け入れている保険会社は、貸出関係の有無に関わらず、業績が低い投資先企業の経営トップの選任議案に対してスチュワードシップ・コード導入後、反対票を投じるようになったこと。3) 投資信託、年金基金および外国人投資家は、スチュワードシップ・コード導入前から業績が低い投資先企業の経営トップの選任議案に対して反対票を投じる傾向にあったが、スチュワードシップ・コード導入後その傾向がより強くなっていること。4) 事業法人および銀行は、業績に関わらず投資先企業の経営トップの選任議案に対してスチュワードシップ・コード導入後も賛成票を投じ続ける傾向にあること。上記内容は、査読付き国際学会で2度報告を行っており、現在、海外ジャーナルへ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
整備後のデータを使用し、我が国におけるガバナンス改革の1つである日本版スチュワードシップ・コードの導入が、投資家の議決権行使行動をどのように変化させたかを明らかにするという成果を得ている。上記の研究内容は、国際学会でも報告しており、現在、海外ジャーナルに投稿中である。早期の掲載を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
まず、現在海外ジャーナルへ投稿中の論文の早期の掲載を目指すとともに、整備したデータを用いて、スチュワードシップ・コード発行前後での議決権行使結果が経営者の行動の結果であるパフォーマンス、ガバナンス、利益の質等に与える影響に変化があるかどうかを検証する。また、スチュワードシップ・コードだけでなく他のガバナンス改革が企業経営に影響を与えているかどうか、どのような影響を与えているかについて検証を行う予定である。 次に、取締役の他社での経験または現在も兼任している他社での役職に対する株主の評価を測定するために、取締役の経歴と議決権行使結果の間の関係を検証する。また、そうした取締役の経歴が、企業業績等に影響を与えるかどうかについても検証していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 当初予定よりも旅費を抑えることができたため未使用額が生じた。 (使用計画) PCを購入するための費用に充当する。
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