最終年度では、オープン・イノベーションの先行要因と成果要因を結び付けた仮説モデルを検証するため、企業に対する調査を2回実施した。仮説モデルを検証するにあたり、他の研究プロジェクトにいて共同研究を行っている延世大学校のイム・スビン准教授とディスカッションし、モデルの妥当性を高めた。 調査に関して、企業の知的財産担当者に対する郵送調査(調査1)とマーケティング担当者に対する郵送調査(調査2)を実施した。どちらの調査も株式会社ダイヤモンド社が有する会社職員録に基づき、データベースを作成した。調査1に関しては、236名に対して調査票を郵送し、79件の回答が得られた(回答率=33.5%)。調査2に関しては、729名に対して調査票を郵送し、144件の回答が得られた(回答率=19.8%)。 調査1では、企業の知財保護戦略が強くなるほど、従業員の外部での知識活用に対するネガティブな態度は強まり、結果としてアウトバウンド型オープン・イノベーションが抑制されるという仮説を検証した。回帰分析の結果、企業の知財保護戦略はアウトバウンド型オープン・イノベーションへ直接的な負の影響を及ぼしていたが、従業員のネガティブな態度は媒介していなかった。 調査2の目的は、組織の志向性がオープン・イノベーションに及ぼす影響と企業パフォーマンスへ及ぼす影響を明らかにすることである。分析の結果、技術志向はインバウンド型およびアウトバウンド型オープン・イノベーションと逆U字の関係にあった。また組織の革新性はインバウンド型およびアウトバウンド型オープン・イノベーションとU字の関係となることが示された。
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