2019年度においては、2018年度に構築された理論枠組みに基づいてバイヤー革新性の戦略的課題を解決する目的で、2018年度から引き続いて事例研究を実施しながら、定量的データによる仮説検証とこれらの研究成果の国際発信に取り組んだ。具体的に、Kim and Takashima(2019)[Effects of retail organisation design on improving private label merchandising]においては、小売企業におけるプライベートブランドの継続的マーチャンダイジング(MD)の改善に与える商品部と店舗部間の組織構造(MD権限の配置)と部門間関係(店舗の協力)並びにバイヤーの管理様式(結果ベース管理)の問題を実証的に検証した。その結果、バイヤーの継続的MD改善を導くためには、商品部にMD権限を配置すること、そして店舗部からの協力を得ることが重要であり、こうした継続的MD改善は小売企業のPBに関わる企業の競争力を高められている。同時に、店舗からの協力が得られている状況において小売企業は、小売バイヤーをアウトカムベースで管理することから、継続的MD改善の効果をより引き上げられるという調節効果が検証された。 したがって、本研究では、バイヤー革新性が管理様式および内部組織の管理問題と企業間関係から相互に規定され、この規定関係が企業成果を導くという組織行動と企業間関係の両局面に関わる研究課題を解決する点が独自性の一つとなる。
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