研究課題/領域番号 |
16K17203
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
金城 敬太 沖縄国際大学, 経済学部, 准教授 (20611750)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソーシャル・マーケティング / 肥満 / 社会厚生関数 / 機械学習 / ベイズ最適化 / 社会的相互作用 / 二重過程 / セルフ・コントロール |
研究実績の概要 |
本研究は,肥満の原因について行動経済学的な知見を利用して解明すること,肥満率の低下のための最適なソーシャル・マーケティングを明らかにすることを目的とする.下記の3つのフェーズで研究を行っている.(1)行動の数理モデルの構築という「理論」的なアプローチ,次に(2)調査データを用いたモデルの「統計的検証」.(3)ヘルスプロモーションにおける最適化および肥満率低下の施策検討し,最後に国民に成果の発信を行うことである.本年度は,計画における(1)については下記の1,2,中心タスクである(2)については3を行った.それ以外にモデリングに関連し研究し4も行っている. 1.プロモーションの際に,広範囲の価値観に対応するために目的変数として経済学で利用されている汎用的な社会厚生関数を導入して一般化した. 2.プロモーションの最適化のために,行動モデルがブラックボックスである場合に,人工知能の一部である従来の機械学習,ディープラーニングで近似したうえでベイズ最適化を用いることを提案した. 3.沖縄県で肥満関連のインターネット調査や分析を行った.行動経済学や意思決定プロセスで注目される,社会的相互作用,二重過程(デュアル・プロセス),さらに関連するセルフ・コントロールなどが肥満にとって重要であることが明らかとなった.上記に加えて,健康に関する行動と関連の深い貧困や教育に関する問題を明らかにするための調査および分析を行い,合理的なメリットなどの情報の伝達が重要であることを統計的に検証した. 4.それ以外では,肥満行動などの行動経済学で扱われる,意思決定上のバイアス,特に情報過多という現象をモデル化,さらに過去の意志決定の効果(事例ベース意志決定)についても新たな実証研究を行った. 1,2は対外的に発表や論文投稿を行っており,3については一部書籍で出版,現在分析中である.4は海外論文へ採録されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,二年度目となっており,主に実証研究についての検討を行う時期であった.すなわち,(2)調査によるモデルの妥当性について「統計的検証」のフェーズである.(計画書における(2)). これに対して,本年度は,(1)理論的な研究および(2)実証研究について進捗があった. 具体的に理論フェーズ(1)では,昨年度明らかになった社会厚生関数を用いたプロモーションの最適化をより拡張して一般的な社会厚生関数を導入したうえで分析することができることが明らかになった. 統計的検証を行うフェーズの(2)についても,具体的にヘルス・プロモーションの最適化の研究・前年度明らかになった肥満の要因に加えて新たな行動経済学的な要因をふまえて,質問紙調査(インターネット)を行い,そのデータを分析した.さらに肥満低減のプロモーションに関連する貧困や教育に関するプロモーションについての調査や分析も行った. ただし,当初の予定と異なった点もある.当初インターネット調査および郵送調査を計画していた.しかし,現状仮説の増加に伴う質問数の増加がありコストの増加がみられたため,インターネット調査に重点化した.さらに昨年予定されていた中央官庁や県,健康関連組織で調査されているデータの利用については,個人情報などの問題もあり入手が困難であったため,独自調査を行っている.後者の代替案として,別のデータとして購買関連のデータを入手しており,そこから食品や外食などの行動の要因を分析する予定である. それ以外の研究でも,肥満行動に関連して行動経済学的な意志決定のモデル化のために事例ベースなどの新たな手法を提案したうえで調査データの分析を行っている. これらの成果については,それぞれ論文に投稿し収録が決定したもの,そして投稿中のものがある.以上を鑑みて,全体的に本研究はおおむね順調に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究としては,最終年度は昨年と同様に実証研究(特に調査および実験)を継続的に行う.そしてそのデータを分析するほか,対外的に発表を行うことにある(計画書のフェーズ(2)および(3)).特に,学会発表や論文誌への投稿を行う予定である. なお,前期のフェーズで行う予定であった一部の介入などの実験については今期行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において調査および実験を行う予定であったが,インターネット調査に重点化し,さらに消費者の購買行動のデータの購入に割りあてた.その経費が安かったことに加えて,そのデータの分析を優先したために介入などの実験を次年度に持ち越したため差額が生じている. (使用計画) 今後は,上記の差額分は,当該年度の翌年度の実験や調査に割りあてる予定である.それ以外については当初計画の通り発表・投稿のための旅費等に割りあてるほか,前々年度から調査費不足のリスクのために繰り越している物品購入にも割りあてる.
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