本研究の目的は、まず公認会計士の告発動機に関する概念モデルを開発し、次にその妥当性を、文化的背景の異なる二国間、すなわち自由経済思想を基礎とするイギリスと、調整経済思想を基礎とする日本の、公認会計士を対象として検証し、その告発動機の背景に、どのような要因があるのかを明らかにすることであった。これらの目的を達成するために、両国において、アンケート調査及びインタビュー調査を実施することを予定していた。 しかし、2017年に発生した不測の事態(研究協力者の急病)のために、当初計画していた、イギリスでのアンケート調査、ならびに研究協力者2名を神戸大学へと招聘し、フォーカスグループを対象としたインタビュー調査を実施することが困難となり、2019年3月(研究計画申請当初における最終年度)に、当該研究の1年間の延長を申請し、認められて2020年3月時点で最終年度を迎えた。延長を申請した時点では、2019年度内に研究協力者2名の短期滞在(2週間程度)を行う方向で調整していたが、その後同協力者1名が治療に専念するためにイギリスの大学を辞職して他国の大学へと異動することになり、日本でのインタビュー調査も見送ることとなった。 なお、このような状況下で実施した2019年度の研究実績は以下の通りである。当初から取り組んでいた日本の公認会計士を対象としたアンケート調査の結果をまとめ、2つの国際学会(ABEN2019[オーストラリア]およびMBSC2020[サウジアラビア])で報告した。また当該研究の一環として取り組んできた日本の文化的背景における企業の倫理的意識の特徴についても、1つの国際学会(EBEN2019[スペイン])で報告を行った。
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