アメーバ経営に関する歴史(主に80年代以降)や戦略変化について、前年度に引き続いて調査を行った。1980年代以降のアメーバ経営および京セラの特徴については、特に戦略会計論の観点から、2017年3月(『アメーバ経営の進化』(分担執筆))、および2017年12月の出版物("Value Creation in Management Accounting and Strategic Management")という形で、本研究の成果として、国内外に発信することができた。これらは、出版機会の獲得などの点で幸運も重なり、当初の予定より早い段階で、研究を進めることができた。 これらの成果を踏まえたうえで、2019年度については、主に、以下の二つのアプローチから、研究の更なる発展を目指した。一つは、これまでの研究方法の延長で、アメーバ経営に関する歴史的資料についての追加的な調査を通じて、先の研究成果について、更なる深化を図るアプローチである。これは、主に、稲盛ライブラリーの訪問や調査先の協力に基づき、歴史的な資料などを追加的に入手・分析する方法である。 もう一つは、過去の財務指標などの分析を、近年発達しつつある機械学習的な手法を活用しながら、定量的かつ探索的に分析し、他の企業などと比較することで、京セラの戦略的な歴史・変遷を、より客観的な視点から分析する試みである。この方法は、現時点では研究方法の模索・試験的実施にとどまってはいるものの、既存の管理会計における歴史、戦略変化研究における新たなアプローチの可能性を示すものであり、今後の更なる進展を期待したい。
|