本研究は、セグメント業績の違いによって、各セグメントにおけるのれん計上額、のれん償却額及び減損損失額の価値関連性に違いがあるのかについて検証を行うことを目的としている。最終年度では、前年度に行った先行研究のレビューを踏まえ、セグメント情報において開示される報告セグメント別ののれん及び固定資産の減損損失に関する情報が投資家に対して有用な情報を提供しているのかについての実証分析を行った。分析の結果、3つ以上の報告セグメントを開示している企業・年サンプルによる分析の結果では、報告セグメント別ののれん及び減損情報が価値関連性を高めるという証拠を得ることができなかったが、4つ以上の報告セグメントを開示しているサンプルに絞り、より詳細なセグメント情報を反映させた分析モデルによる追加検証を行った結果、統計的に有意な価値関連性の向上が見られた。さらに、セグメント情報における表示順の早い報告セグメントやセグメントROAの高い報告セグメントほど、のれん計上額の企業価値に与える影響が大きいということについても示された。これらの結果により、報告セグメント別ののれんおよび減損損失額の開示が投資家に対して有用な情報を提示しているということを明らかにするとともに、投資者はどの企業結合によって発生したのれんであるのかによって、各のれんの価値に対して異なる評価を行っているということを示唆する証拠についても得ることができた。
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