本研究は、エスニック・マイノリティ集団間の社会的資源や政治的資源の格差、さらにはそれぞ れの文化的特徴が、集団関係構築のなかでいかに処理されるのかという問いに基づき、アメリカ合衆国においてエスニック・コミュニティの分析を試みた。特に本研究は集団間の文化的差異や社会的・政治的資源の格差が、いかに調整され、いかに集団間の協働関係が形成されるのかについて注目した。 本研究は、複数のエスニック集団が複雑に共在し、集団と集団の関係がさまざまな状態で形成されているロサンゼルスをフィールドとした。当該地で特に分析の中心としたのは日系コミュニティである。というのは、アジア系として長い歴史を持ち、かつ一定の社会的・政治的資源を有すること、ならびに従来から他集団との関係を積極的に形成してきたからである。加えてリトルトーキョーというエスニック・タウンを有していることからも日系コミュニティを取り上げた。 本研究では、リトルトーキョーを拠点として、複数のコミュニティ団体による活動と、そこで展開されるコミュニティ・プロジェクトについてインタビューと参与観察を実施した。また、その過程において文書資料の収集も行なった。 その成果としては、第一に日系としてのエスニック・コミュニティの歴史的変遷である。同コミュニティはその歴史はもちろんのこと構成員の多様化などから常に変化を遂げてきており、その象徴的存在であるリトルトーキョーの維持保存は常にコミュニティの課題であり続けてきた。そのうえで第二に、2000年代以降のアメリカ社会の変化はリトルトーキョーの様相をより変化させ、日系を含む複数の集団間の関係形成がいっそう求められてきた点である。そのなかで複数の集団が協働関係を築くための様々な活動を展開してきた。これらの研究成果は国内学会報告に発表及び単著において詳細にした。
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