研究課題
本年度は、戦前満洲のメディア史を調査研究するため、中国近現代史、メディア史及び満洲国期の先行研究と本研究に関係する資料のリストアップを行った。資料収集については、主として、満鉄発行の『調査月報』や『満蒙』から排日運動に関する雑誌記事を収集するとともに、その記事目録を収集し整理して、排日運動とメディア環境を明らかにすると考えられる資料の目処をつけた。それらの雑誌記事の読解と分析も進めた。また、外務省外交史料館における外交後援会に関する資料を収集・整理し、その分析を進めた。ここから当時の満洲における排日運動の民間団体の活動実態とそれを日本外務省がどのように認識し、どのように働きかけていたかを一定程度知ることが出来た。これらの読解を進めた資料群には、排日運動においてメディアがいかに利用されたか、また、政治的意思表明としてのデモをどのように、どれだけ実施していたかを知ることが出来た。これは、これまで未開拓の戦前排日運動におけるメディア史という本研究のアプローチが遂行可能であることを示している。さらに、在満日本人がそれをどのように認識し対排日運動につなげていったかに関しても満洲青年連盟などの資料の読解を通して明らかにできつつある。これに加えて、本年度は、満洲国において電信事業・電話事業・ラジオ放送事業を行っていた満洲電信電話株式会社に関する研究を進め、“Post-imperial Broadcasting Networks in China and Manchuria”を共同研究としてThe Dismantling of Japan's Empire in East Asia に執筆した。
2: おおむね順調に進展している
当該年度は、“Post-imperial Broadcasting Networks in China and Manchuria”を共同研究としてThe Dismantling of Japan's Empire in East Asia (Routledge,2017)に執筆し、海外に成果を公表した。また、中華人民共和国へ資料収集へ赴くなど、積極的に内外の資料収集を行い、その結果を整理した。この資料収集と整理の成果は次年度の研究を飛躍させる上で重要な作業となった。
今後は国内外のさらなる資料収集をすすめるとともに、その内容を整理したうえで分析し、学術雑誌の投稿を積極的に行っていく。主として、東アジア近代史学会やメディア史研究会、マス・コミュニケーション学会の学術雑誌への投稿を考えている。
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