本研究は、ボランティアへの期待の高まりの中、都市部ボランティア活動に焦点を置く既存研究に対し、過疎地域における共助の論理の検討による、包括的ボランティア論の構築を目的とする。そのために、主に過疎地域における高齢者を支える共助を取り上げ、その実態と変容、論理について実証研究を行う。さらには、既存の都市部ボランティア研究や、非対面的ボランティア研究などとも比較検討することにより、包括的ボランティア論の構築を目指すものである。 2018年度は、一昨年度および昨年度より継続して、高齢化や人口減少、世帯の小規模化が進む西日本地区の過疎地域(山口県下関市豊北町)において、福祉関係者や住民への聞き取り調査(地区社会福祉協議会、市社会福祉協議会、高齢者サロン担い手、高齢者サロン参加者への聞き取り調査)を実施した。加えて、高齢者サロンへの参加や高齢者向けの買い物バスへ乗車し、参与観察を実施した。 調査の結果、活動の継続には、住民への丁寧な活動趣旨説明やリーダーの役割が重要な意味を持っている。他方で、当該地域は長年活発な地域福祉活動が展開されている地域であり、農村部としての地域活動の活発さや近隣関係の緊密さがあるというが、そのような地域においても近年後継者不足や寄付額の減少といった問題が起こっている。現在の担い手層は友人・知人の声かけにより担い手となっていたが、次の世代に声をかけても、現在は60歳代でも仕事を続けていることも多いことから、なかなか新たな担い手が見つからず、個人の努力による後継者確保には限界があることが明らかになった。また、地域福祉活動は活動の成果が見えにくく、それが地域住民や地域外に居住する高齢者の家族へ伝わりにくいこともある。そのような非対面的な他者についても、盆・正月といった帰省時期にアプローチするなどの方法があることが示唆された。
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